壱
□影として
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そのあと寝てしまっていたようで起こされたのは才蔵がいなくなったあとの部屋。
無理矢理起こされたので寝ぼけ眼。
『《どうしたの?伊佐波海。眠いんだけど》』
「才蔵が急にいなくなっちゃったの。嗅覚素晴らしいんだよね?
探せるよね?」
『《まあ出来るけど。》』
「じゃあお願いね。」
『《はいはーい。ってマジかよ。
そんじゃ、戸閉めてもらえる?》』
「うん。」
ぱちんと伊佐波海が閉めると暗くなった事を確認して影から再び
飛び出す。今度は顔だけではなく全部。
『ふぁぁぁ。人使いが荒いったらありゃしない。』
クンクンと畳の臭いを嗅ぐ。
これでわかるのかと聞かれればうんと答えよう。
その臭いが道となって私には見えるからだ。素晴らしいだろフフッ。
ゆっくりとまた影に戻ると
『《外だね 。面倒だから少し体借りるよ》』
「わかった。」
伊佐波海が目を閉じると同時に
私が今度は交代とばかりに目を開ける。
『本当私今日寝れるのかな?』
さっとそこから瞬時に消え、
臭いを便りに向かう。
『うーん。音がする。川かな?』
近くまで来るとさっさと伊佐波海に戻ってそのあと睡魔に耐えられず目を閉じた。
パチンと素晴らしい音が最後に聞こえたが無視しよう。
きっと私が聞いちゃいけない音だから。