君たちと俺

狼さんとの出会いは
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要「あー、ねみー」


悠「要それ何回目?」


春「今日はちょうどいい気温ですからねー」


千「春一番かな?」


祐「千鶴、いまは秋だよ」


本日も仲良く屋上にて昼食中の5人


秋にしてはいまだに夏の暑さが残る日々が続く今日は珍しく涼しく、眠気を誘う気温である


のんびりとした空気が流れるそこに、珍獣が現れた





ガチャリ





その音とともに開いた屋上への入口


そこから顔をのぞかせたのは、問題児の黒沢了である


目が合った瞬間、お互いに動きを止めた


そして流れる無言


絡む視線


それを断ち切ったのは、足音と、声だった


「了ー!待ってよ!」


その声が聞こえた瞬間、光速で屋上の貯水タンクに登る黒沢


5人はその姿を唖然と見つめる


黒沢が完全にてっぺんに着いた時、屋上の扉が勢いよく開く


東「あ、あれ?」


現れたのは、教師の東晃一だ


祐「東先生、どうしたんですか?」


東「いや、あの、りょ…黒沢君来なかった?」


その言葉にあぁ、と心で呟く5人


そして、貯水タンクの上に目を向ける


ちょうど、目の前に立つ東の頭越しに顔を出している黒沢が見える


そして目が合えば、口元に人差し指を当てる黒沢


(((((言うなってことか…)))))


そして全員で、首を横に振った


東「そっかー、もし見かけたら職員室に来るように伝えてくれる?」


そう言って彼は屋上を後にした


その足音が完全に遠ざかってやっと貯水タンクから降りてくる黒沢


「「「「「…………」」」」」


パンパンっと土埃を払う黒沢に注がれる視線


上がった顔


要「お前何したんだよ」


いきなり口を開いた要をぎょっとして見つめる4人


『…何も』


それに短く答える黒沢


学校の問題児と生徒会役員の会話に首を傾げる4人


二人は、親しいのだろうか


問題児に話しかけてる人なんて、教師以外に見たことがないからだ


要「何もしてないのに追われないだろ」


ずかずかと物を言う要にあわあわする春と千鶴


『…俺が知るか』


要「すくなくとも髪と制服はお前が悪いからな」


その言葉に黙ってしまう


『塚原うるせぇ』


ムッとした顔でそう言った黒沢に更にあわあわとする春に千鶴


要「…お前ちょっとこっちこい」


膝に置いていた弁当を下に置き立ち上がる要


『…断る』


要「ったく…」


ズカズカと黒沢に近づき自分よりすこし近いところにある頭に手を伸ばす要



『…ぃって』


要の指が触れたのは、黒沢の目蓋にある絆創膏


要「保健室行くぞ」


『いい』


要「行くぞ」


黒沢の腕を掴んで無理やり出口に向かう要


『いいってんだろ放せ』


要「祐希、俺の弁当教室持ってといてくれ」


『塚原、放せ』


弁当食ってろよ、と腕を振り払う黒沢


祐「えー何で俺なわけー?」


要「クラス一緒だろうが」


祐「千鶴も一緒じゃん」


要「小猿は食うだろ、人の弁当」


千「ムキーッ!何ですってぇ!?」


わちゃわちゃと騒ぎ出す3人


その光景を、再び要に腕を掴まれたまま見つめる黒沢


そんな黒沢を見つめる悠太


ふと、2人の視線が絡む


悠「あ、どうも」


ペコっと頭を下げた悠太


そんな悠太をすこし驚いた表情で見る黒沢


『…は?』


悠「え?」


そして、悠太と祐希を交互に見る


『…要、見ろよ同じ顔してやがる』


そう言いながら要の肩をつつく黒沢


要「そりゃ双子だからな」


『あー双子か、しかしそっくりだな』


納得している黒沢を見てふっと頬を緩ませる要


要「お前いま要っつったろ?」


『…言ってねぇ』


ブリンっと顔を逸らす


要「言ったな」


『言ってねぇ、消えろ塚原』


ブンっと持っていたパンを要に投げつけて屋上を出ていく黒沢


春「な、何だったんでしょうか…」






(屋上からはじまった)


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