The Golden Darkness
□first contact
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「なあ、少し休まねえか?結構歩いたし」
「そうですね。では、そこの公園で休憩しましょう」
たい焼きを食べながら三十分近く歩き回った二人は、近くの公園にあったベンチに腰をかけて休憩に入ることにした。
「ふう、疲れたぁ……あっ、そうだ。何か飲み物買ってくるな。何がいい?」
「お任せします」
「おう、わかった」
そう言うと、リトは立ち上がり自販機の方へ歩いていった。
「結城リト。あれではまるで唯のお人好しですね」
ヤミは自分が感じたリトの人柄と依頼内容との相違から、いまいち『結城リト』という人物を掴みかねていた。
(これはやはり―――)
「買ってきたぞ……ん?どうかしたか?」
「!い、いえ、何でもありません」
思考に走っていたヤミだったが、リトが帰ってきた為ふと我に帰る。
「ほら、口に合うか分からないけど」
「ありがとうございます」
ヤミはお礼を言い、持っていた飲み物を受け取る。
「……肩にゴミがついていますよ」
ヤミがリトの肩を指さす。
「え?どこだ?」
「少しの間、動かないで下さい」
「ッ!?ちょ、ちょっと!」
そう言うと、ヤミはリトの方へ身を乗り出す。
「(うわぁ……なんかいい匂いが―――って何考えてんだ俺!?これじゃ変態みたいじゃないか!)」
チクッ
「いッ!」
「どうかしましたか?」
「あっ、いや……」
「はい。取れましたよ」
「あ、ああ。ありがとう」
なんとなくおでこを擦りながらリトはお礼を言う。
「(チクッとした気がしたんだけど気のせいかな…………あっ、そうだ)」
そして何か思い出したようにリトは口を開いた。
「そういえば、探してる奴の写真とか無いのか?ほら、もしかしたら俺の知ってる人かもしれないし」
「写真、ですか?」
ヤミは懐から一枚の写真を取り出し、リトに渡す。
「これです」
ヤミから受け取った写真。その写真に写っていたのは―――
「(ララと……俺?)なんだ。ララを探してたのか。それならそうと言ってくれれば―――」
「違いますよ」
「―――へ?」
リトの言葉を否定で返すヤミ。
「じゃあ一体……」
「わかりませんか?」
ヤミはそう言いながらリトの肩に左手を置き、顔を近づける。
「ちょっ!なんだ!?」
急にヤミの顔がドアップになって狼狽するリト。そして―――
「貴方のことですよ。結城リト」
――変身《トランス》・ナノスライサー――
ヤミ髪を刃に変身させ、リトへ向かって放った。
「ッ!?どわぁっ!!」
リトの直感が働き、ヤミの一撃を紙一重で躱《かわ》す。しかしその余波だけでリトの服が綺麗に切れてしまっているところを見ると、当たっていれば命は無かっただろう。
「むっ、なかなかやりますね」
「き、急になにすんだ!?危ないだろ!」
まだ状況をうまく呑み込めていないリト。それでも『お前は何なんだ』と言わないあたり、かなり非日常に汚染されているようだ。
「私は『金色の闇』。殺し屋です」
「こ、殺し屋!?」
フィクションの中でしか聞かないような単語を聞いて、リトは思わず声を荒らげる。
「結城リト、貴方を始末せよとの依頼がきています。恨みはありませんが……」
そこまで言うと、ヤミは再び刃を構え―――
「消えてもらいます」
―――リトへ向かって放った。
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