The Golden Darkness

□one day in Yami
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ピピピピピピッ

カチャッ

とある宇宙船の生活スペース。その中に鳴り響く目覚まし音が止められ、一人の少女が目を覚ます。

「午前七時。時間ですね」

そう言ってベッドから起き上がったのは、先日リト抹殺の為に地球にやってきた宇宙人、金色の闇ことヤミだった。

『マスター、今日も朝から出掛けるんすか?』

毎日毎日結構なことっすねぇ、と宇宙船『ルナティーク号』に搭載されているAI『ルナ』が呟く。

「この星の文化は興味深いですから」

『そんなこと言って、今日もたい焼きの食べ歩きっすか?』

「ち、違います!今日はちゃんと用事があるんですから」

『はぁ、それならいいんスけど』

ヤミは冷蔵庫の中から食材を幾つか取り出し、簡単に朝食を作る。

『でも、なんだかんだいってきちんとたい焼き以外のものも食べてるんスよね。料理するところなんて久しぶりに見たっすよ』

「"家庭スキルは乙女の嗜み"と本に書いてありましたので」

朝食を作り終えたヤミはそのまま椅子に座って食べ始める。

『またそれっすか。てゆーか、何でマスターがそれに触発されてるんすか?』

「郷に入っては郷に従え、という言葉もありますし」

『いや、それ何か違くないすか?』

雑談をしている内にヤミは朝食を終え、外出の準備をする。

「それでは行ってきます。留守の間は頼みましたよ」

『了解。って言っても、金色の闇の宇宙船にちょっかいを出すなんて誰もいないと思うっスけどね』

ヤミは変身《トランス》で背中に翼を生やし、空高く飛翔した。





それから暫く時が経ち、場所は変わって彩南高校。ここの中に設けられている図書室の一角にヤミは座っていた。

(図書室。学校にこのような場所があったとは……此処ならあまり離れずに本も読めますね)

何から離れずになのかは敢えて言及しない。
そうしてヤミが暫く本を読んで時間を潰していると、図書室へ向かってくる足音が一つ聞こえてきた。

「はぁ〜、まったく親父も人使いが荒いよなぁ」

愚痴を溢しながら扉を開けて入ってきたのは、ヤミのターゲット(?)である結城リトだ。

「って金色の闇!?何でお前が此処に居るんだ!?」

誰も居ないと思っていた図書室に自分の命を狙う殺し屋が居た為、リトは思わず大声を上げる。

「私が何処に居るかなど、貴方にとやかく言われる筋合いは無いと思いますが」

「そ、それはそうだけ―――いやいや!学校に部外者が勝手に入っちゃ駄目だろ!」

「そうなのですか?普通に正面から入りましたが特に何も言われませんでしたよ?」

「(ララの時と言い、どんだけザルなんだよ此処の警備は……)」

部外者が我が物顔で居座っている今の状況を見て思わず頭が痛くなるリト。

「それはそうと、貴方は何か用があって此処に来たのでは?」

このままでは一向に先に進まない為、ヤミが話を切り出す。

「あ、ああ、そうだった。親父から動物図鑑を借りてくるように言われてたんだった」

「動物なら……確か其処の棚ですよ」

ヤミは図書室の奥にある棚の一つを指さす。

「ああ、サンキュー」

リトは吃りながらも礼を言い、奥の本棚へ歩いていった。それを見届けたヤミは再び読書に戻ろうと本を開―――こうとしたが、頻《しき》りにリトがチラチラと此方を見てくる為、ヤミは一旦本を閉じる。

「……まだ何か用ですか?」

「い、いや!なんていうか、えーっと……殺し屋って相手が油断している隙に後ろからバッサリっていうイメージがあるから、あはは……」

「……はぁ」

どうやらリトはあれで警戒しているつもりだったらしい。それを聞いてヤミは思わず溜め息をつく。

「正面から戦い難い相手に対し騙し討ちという戦法は確かに有効ですが、少なくとも貴方に使う意味はありませんね」

「ぐふっ!」

「それに、此処で貴方を殺すと後始末が大変そうですし」

「(今の俺って、そんな安っぽい理由で生かされてるのか……)」

"リトの命<掃除の手間"発言に項垂れながらも、リトは目的の本を見つける。

「見つかったのですか?」

「ああ、お陰様でな。悪かったな邪魔して」

「いえ」

本の貸し出しの手続きを終えたリトはヤミと別れ、そのまま図書室を後にした。




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