短編小説

□Fate/ZeroMasked
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―――――聖杯戦争。
それは七体のサーヴァントとそれを使役する七人のマスターで行われる、覇を競い合う殺し合い。サーヴァントとマスターは最後の一人になるまで戦い続け、生き残った者のみが万能の願望器『聖杯』を手にすることを許される。
そして今宵、とある倉庫街で三体のサーヴァントが戦いに望んでいた。……最も、戦っていた二人の騎士の所へ戦車《チャリオット》に乗った大男が乱入してきただけだが。

「おいこら、まだおるだろうが!闇に紛れて覗き見している連中は!」

戦車《チャリオット》に乗ってる大男、ライダーが大声を上げる。

「……どういうことだ、ライダー」

先程まで戦いを行っていた騎士の一人、セイバーがライダーに問いかける。

「セイバー、そしてランサーよ。うぬらの真っ向切っての戦い、真に見事であった。あれほどの清澄な剣戟を響かせては、惹かれて出てきた英霊がよもや余一人というわけはあるまいて」

どうやら気配を察知したわけではないようだ。二人の決闘に心惹かれたライダー故の勘、というところだろう。

「情けない。情けないのぅ!冬木に集いし英霊豪傑どもよ。このセイバーとランサーが見せつけた気概に、何も感じることがないと抜かすか!誇るべき真名を持ち合わせていながら、コソコソと覗きに徹するというのなら、腰抜けだわな。英霊が聞いて呆れるわなぁ!んん!?」

ひとしきり豪笑したライダーは、未だに姿を見せようとしないサーヴァントに向けて、両腕を大きく空へ突き上げながら宣言する。

「聖杯に招かれし英霊は今!ここに集うがいい!尚も顔見せを怖じける臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」

ライダー――イスカンダル王――の声が木霊するように、夜の倉庫街に響き渡った。





「我《オレ》を差し置いて、王を名乗る不埒者が一夜に二匹も涌くとはな」






「「「!?」」」

突然の声にその場に居る全員が、その声が聞こえてきたであろう方向へ振り向く。そこに居たのは、黄金の甲冑を身に纏い、同じく黄金の髪を逆立て、街灯の上から真紅の瞳で見下すように立っていたサーヴァントだった。

「難癖つけられたところでなぁ……イスカンダルたる余は世に知れ渡る征服王に他ならぬのだが……」

「たわけ。真の英雄たる王は天上天下において我《オレ》ただ一人。それ以外は有象無象の雑種に過ぎん」

そう言い捨てる黄金のサーヴァント、アーチャー。一方雑種と言われたライダーは、怒るどころか少し呆気にとられていた。

「そこまで言うんなら、まずは名乗りを上げたらどうなんだ?貴様も王であるなら、まさか己の威名を憚りはすまい」

「雑種風情が。我が拝謁の栄に浴してなお、王である我の名を問うか」

アーチャーがそう言い切ると、左右の空間が金色に輝きながら歪む。そしてまるで浮き出てきたかのように、その向こうから剣と槍が一本ずつ現れる。その武器の身に纏う神秘は、誰が見ても宝具のそれと同じであることが分かる。

「貴様のような無知蒙昧は、早々に我の前から塵となって消え去るがいい」

アーチャーはギリギリと弓を引き絞られたように構えられた剣と槍をライダーに向ける。そして今にも剣と槍が飛び出そうとしている。
刹那―――――






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