読物

□痣(しるし)
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飼い猫というよりは籠の鳥と言う方がしっくりくる。
久しぶりに会ったその女に俺はそんな印象を持った。
初めて会ったのは、確か攘夷戦争の只中だったはずだ。
あれから何年も経ったはずなのに、喫茶店で目の前に座るこの女、あさぎは相変わらず美しく、俺の男としての欲を執拗に煽ってくるのだから厄介だ。

「銀時、元気そうだね・・・」
「まぁな。」

さっきから言い回しを少し変えては似たような話を数回繰り返している。
テーブルに置かれたコーヒーはすっかり冷めてしまった。

「あさぎさぁ、まだ高杉と一緒にいるんだろ?」

‘高杉’という言葉にあさぎの目は恐怖に染まる。

「・・う、ん・・・」

自分の肩を擦りながら俯いてしまった。

「何お前、喧嘩でもしたのか?で、アイツんとこ帰りたくなくて偶然見かけた俺に声かけたわけ?」

あさぎが小さく頷く。
細くて小さな躰が小刻みに震えていた。

高杉の女になった当時から、時々あさぎの手足に痣があったのは知っていた。
気になって聞いたこともあったが、あさぎは「何でもないよ。」と笑うだけで、何故その痣ができたのかは教えてくれなかった。
ずっと、気になっていた。


高杉につけられたモノなんじゃないかって・・・


家に帰り玄関の引き戸をからりと開ける。

「ただいま〜。今帰ったぞ〜。」

声をかけるも、そもそも人の気配がない。

「誰もいねぇのかよ・・・」

参ったなとは思ったが、振り向き声をかけた。

「ま、あがれよ。あさぎ。」

居間のテーブルの上には書置きがあった。

『銀さんへ

 姉上と神楽ちゃんは九兵衛さんちでパジャマパーティだそーです。
 僕はお通ちゃんのコンサートが札幌ドームであるので行ってきます!!
   
        新八より』

二人とも今日は帰ってこないらしい。
いよいよ厄介なタイミングであさぎを家に連れ込んじまった。
だが、最早何を思っても後の祭りだった。


あさぎに風呂を勧めて、俺はテレビを見ながら半ば放心状態だった。
いつもは気にならない風呂の水音が、今日はやけに部屋に響く。
その水音を聞くと、何だか下腹部がぞわぞわとさざめきだす。

「銀時。お風呂先にありがとう。」

濡れた髪、上気した頬。
薄い部屋着を通しても分かる柔らかそうな躰のライン。
痣。
俺は自分の欲望を抑えつけるのを止めた。

細い肩を押すとあさぎの躰は簡単にソファに沈んだ。

「ちょ、何す…⁉」

抗いの言葉を吐こうとする唇を乱暴に塞ぎ、角度を変えながら深く深く貪りつく。

「ん…はぁ…」

甘い吐息が漏れ始めたところで、唇を解放してやれば、名残惜しそうに銀糸が繋ぐ。

「銀、時ぃ…」

もっとという言葉を含んだ甘い呼び掛けに煽られ、耳朶を甘噛みし、首筋、鎖骨、鳩尾、と口付けを落としていくと、躯にも紫の痣が。

「高杉だな?あいつにつけられたんだろ?」
「銀時ってその話する時必ず泣きそうな顔するよね。」

あさぎは、そう言うとぎゅっと俺の首筋に縋り付き「そーゆーとこ好き」と囁いた。
俺は紫の痣の上に重ねるようにして紅い花を咲かせるとあさぎの着物の前をはだけさせ、胸の膨らみを露わにした。
既に主張を始めていた胸の飾りを口に含み、片方を指で弄ぶ。

「あ、ぁぁ、や…銀、」
「やじゃねぇだろ。俺に声かけて、のこのこ家までついて来て…誘ったのはオメーじゃねーか。」

ぴちゃっとワザと音をたてて、舌で嬲っていた飾りから口を離すと、俺は口許だけで意地悪く笑った。

「だって、そんなつもりじゃな…やっ」
「そんなつもりじゃなかった?じゃあどんなつもりでココ、こんなに濡らしてんだよ。」

臍から下腹部を指で伝い秘部へ至ると、既に濡れそぼっていた蜜壺はくちゅりといやらしい音をたてて、俺の指を簡単に飲み込んだ。

「あぁん…ダメぇ…」
「一本じゃダメってことだろ?そうがっつくなって。」
「違っ…ひぁ‼」

全く余裕のあるソコを満たす為、指を一気に三本に増やす。
中でバラバラと動かしてやれば、もうあさぎの口からは嬌声しか漏れなくなった。

「あ、あぁ、銀と、きっ!イクっあぁぁぁあ‼」

その瞬間あさぎの秘部はきゅうっと俺の指を締め付け、痙攣した。
その感覚に俺は我慢の限界を迎える。

「…⁉え、何?」

余韻に浸り、まだトロンとしたあさぎの目の前に質量を増した自身を取り出して言った。

「咥えろ。」

潤った小さな唇が、限界まで開き、俺の穢れを含み、奉仕してるのを見てるだけで欲を放ってしまいそうになる。

「じゃあそろそろお前にもご褒美やらないとな。」

今度はタラタラと物欲しそうに涎を垂らすあさぎの下の口にいやらしく濡れた俺の切っ先を当てがい、一気に貫く。

「っっ‼‼‼」

声にならない声を上げ、あさぎの躯が大きく弧を描く。

「またイったのか?高杉の飼い猫は随分と淫乱だな」
「違、う…飼われて、なん、かっ…ひぁっ‼」

角度を変え、子宮の奥をずんと突いた。
上から漏れる甘い吐息とは裏腹に、下は俺から精気を絞り取るようにきゅうきゅうと吸い付き、締め上げてくる。

「もうヤベェ…オメーと違って、こっちはこーゆーのご無沙汰なもんでな。…っく、出るっ」
「や‼ダメェ、、あぁぁぁん‼」



怠い。
頭もぼーっとする。
今何時だ?

枕元にあるはずの目覚まし時計を手探りで探す。
が、手に当たったのはテレビのリモコンだった。
弾みでテレビがつく。

『今日のアンラッキーは天秤座のあなた。大好きな人にフられちゃうかも。独りよがりは災いのもとです。気をつけましょう。ラッキーフードはチョコレートパフェです。今日も元気にいってらっしゃい。』

結野アナが最高の笑顔で最悪の運勢を伝えていた。

そこにあさぎの姿はもうなかった。

あったのは一枚の書き置き。

『銀時のバカ。サイテー。』

殴り書きだったが、確かにあさぎの字だった。

寝癖のついた白髪の天パをガシガシと掻く。

「…チョコレートパフェでも食いに行くか。」

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