短編
□ラブアタック!
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「ト・キ・ヤ〜〜!」
廊下でトキヤを見つけたので背中に飛びついてみる。
私とトキヤは学園のルールを破って付き合っている。
このことを知っているのは、音也となっちゃんと真斗君とレン君と翔ちゃんと春ちゃんと友千香だけ。
「っ! また、貴女ですか。名無し。学園内では飛びついたり抱きしめたりしないという約束ではなかったですか。」
私が飛びついてもビクともしないトキヤに少し驚きながら、トキヤの言葉に反論する。
「あっれ〜? そんな約束、名無しちゃんしたっけなぁ〜?」
「しましたよ。」
「名無しちゃんは覚えてないなぁ〜? ……ごめんなさい。」
そんな睨まなくてもいいじゃん、と心の中で文句を言う。口に出して文句を言うと怖いからね、トキヤ。
「良いですか。名無し。私達は、学園の恋愛禁止令を破って付き合っているんです。なので、学園内でイチャつくのはお互いに色々とデメリットがあるんですよ? 名無しは退学したいんですか? ……したくありませんよね。ですから、約束は守って下さい。」
小声で私に言い聞かせる。
お前は私のお母さんかっ!
「…………そっか。分かったよ!」
たっぷり間を開けて笑顔で答える名無し。
トキヤは名無しが意外とあっさり話を聞いてくれたことに驚いていた。
「そうですか。分かれば良いんです。」
「うんっ! じゃあトキヤ、今から学園長のとこに行くよっ!」
「……………は?」
名無しが言っている意味が分からなくて間を開けて言葉を発するトキヤ。
「だから、学園長のとこに行って私達の交際を認めてもらおう、って言ってるんだよ。」
「貴女はバカですか、名無し。私が言っているのはそういうことではありません。」
「あぁ〜もう、うっさいなぁ。話は後で聞くからっ、今は学園長の所に行くのが最優先!」
そう言いながらトキヤの腕を引っ張る名無し。
「……はぁ。」
トキヤは何を言っても無駄だ、ということを悟り、ため息を吐きながら名無しについて行くことにした。
バンっ
学園長室の扉を勢いよく開ける名無し。
私は大きく深呼吸をした。
「学園長!! 私とトキヤからとっても大事な話があります!」
幸運なことに学園長はちゃんと居てくれた。良かったぁ〜。
「ミーに大事な話とは何ですかァ??」
こっちに、いつものハイテンションで近づきながら訊ねてくる学園長を、『デカッ!』とか思いながらも頑張って言葉を紡ぐ名無し。
「え、えっ……と……、あの……その………。」
何も言う事考えてなかったァァァアアアアアア!!!
どうしよう……。ここまで来たのに今更言えなくなるなんて………。恥ずかしい…、あんな大胆な登場までしたのに……。
名無しが困ったような、泣きそうな顔をして俯いていると、今まで黙っていたトキヤが溜め息を一つして、口を開いた。
「……、私達は、三ヶ月ほど前から学園のルール、恋愛禁止令を破り交際をしています。」
トキヤに視線を移す学園長。
「なるほど。大事な話というのはそれだけか?」
学園長の表情が変わった。表情だけでなく、口調もいつもと違って普通だ。
怖い。
でも、言わなくちゃ! 私とトキヤの愛の絆は中途半端なものじゃないってこと分かってもらうんだから!! そのためにここまで来たんでしょ、私!
「まだ、ありますっ! まだ、話は終わっていませんっ!」
再び私へと視線を移す学園長。
「私とトキヤは、学園長や周りの人達が思っている程、緩い絆で出来てはいませんっ!!」
「私は、トキヤと一緒にいると沢山のメロディが頭の中に浮かんできます。私がここまで成長できたのはほとんどがトキヤのおかげなんです。」
「…名無し。私も、私も名無しのそばにいると沢山の詞が浮かんだり、早く歌いたい、という感情が溢れてきます。」
「……確かに、三ヶ月くらい前から二人は変わりマシタ。輝いていマシタ! そう、それはまるで、太陽と月のように!! 良いでショウ!!! YOU達のの交際を認めまショッッウ!!!!」
学園長は、普段の口調に戻っていて、さっきまでの威圧感は感じられなくなった。
「早乙女さん! それは、本当ですか?」
目を見開くトキヤ。
「モチロン本当デース!タダシ絶対に見つからないようにしてくだサーイ。」
「トキヤ、やったよ! 私達、学園長公認の最強カップルだよ!!」
おおはしゃぎをしてトキヤに抱きつく名無し。
トキヤは優しく笑いながら『そうですね。』と言った。
「これからは学園内で存分にイチャイチャできます!」
目を輝かせるトキヤに私は驚いた。
本当はトキヤもイチャイチャしたかったんだね……。
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