短編

□ずっと
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朝の坂道を下るその先に、無邪気に笑う名無しを見つけた。

「悠太、おはよう。」

「おはよう。」

「祐希も、おはよう。」

「ん、おはよう。」

「春ちゃんも、おはよう。」

「おはようございます。名無しちゃん。」

「めがn……じゃなくて、要もおはよう。」

「おいっ、今、『眼鏡』って言おうとしただろっ! まぁいいや、おはよう。」

「えへへっ。あっ、おはよう、千鶴っ!」

「……っ、おう。」

『おはよう。』って一言なのに、また今日も言えなかった。

どうしてなんだろう?名無しの前じゃ、いつもの、普通の、俺じゃいられない。



ずっと、名無しが、名無しだけが俺の心の中に溢れてるんだ。

もうこの気持ちを抑えきれない。

『好き』って言いたい。

けど、言えない……。

名無しが眩しすぎるからなんだ。

今はただ、もっと、名無しのそばで笑えるように、って心の中で願うことしか出来ない。

いつの日か、名無しだけにこの想いが届くといいな。


胸が高鳴る急な坂道も、無邪気に笑う名無しがいるから。


今、名無しにはどんな風に俺が見えてるんだろう。


目と目が合った時、恥ずかしくなるけど、それよりも、嬉しくなる。

ずっと、名無しに、名無しだけに知ってほしくて……

また、この気持ちが膨らむ。爆発寸前なのに、言えない。けど、言いたい。

だって、名無しと笑いたいから。

俺が俺のまま笑えるように、心の中でそう願う。

いつの日か名無しだけにこの想いが届くといいな。


いつか名無しと手をつなごう。

名無しに見せたい場所があるんだ。名無しがすごく喜びそうな場所。

ずっと描く君との僕……

初めて君を見たあの時から――――


ずっと、名無しが、名無しだけが俺の心の中に溢れてるんだ。

もうこの気持ちを抑えきれない。

『好き』って言いたい。『大好きだ』って、『愛してる』って言ってしまいたい。

けど、やっぱり言えない……。

名無しが眩しすぎるから。

もっと、もっと名無しに近い、すぐそばで笑えるように、心の中でそう願うから。

いつの日か君だけにこの想いが届くといいな。





陽のあたる坂道で、また今日も、君を見つけた。


「おはよう、千鶴っ!」

満面の笑みで君が『おはよう。』って言ってくれたから、俺も―――


「おはようっ! 名無し!」

俺も最高の笑顔で『おはよう。』って言った。










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