Bad∞End∞Night

□第一章
1ページ/3ページ

 
‡ミク=ウィーン‡
 
どうしよう…完全に迷ってしまった…。
 
16歳にもなって迷子とは、我ながら泣けてくる状況だ。
 
先週、私宛てに1通の招待状が届いた。封筒には私の名前、住所、そして私が迷っている“バルツフォレスト”の3項目しか書かれていなかった。
 
両親にこの事を伝えると、絶対に行かせないと怒鳴られてしまった。
 
それも当然だ。バルツフォレストに関する噂をよく聞くが、どれも悪いものばかりで、正直良い印象を持てない。
 
バルツフォレストは“幻の葡萄”で有名だ。これを赤ワインにすると、口では語れないほど絶品だと耳にしたことがある。
 
しかし、その葡萄は希少で、手に入れるのは非常に困難だそうだ。にも関わらず、バルツフォレストへ葡萄を求めて迷い込むワイン好きが大勢いて、さらには迷い込んだまま行方不明になった人が、全体の7割だとか何とか…。
 
これだけの不安材料が揃っているのに、私は夜中、両親が眠った隙に家を抜け出してここまで来た。
 
理由はもちろん、好奇心だ。平凡な暮らししかしたことのない私にとって、これは滅多にない機会だ。
 
(こんなにも私の心を弾ませてくれる出来事、生まれて初めて…!)

身支度を整え、意気揚々と出てきた私も、迷ってしまえば後悔せざるを得ない。
 
(あんなに楽しみにしてたのに〜…)
 
溜め息ばかりが口から出てくる。いつの日か私も、この森で死んでしまうのだろうか…!?
 
(…嫌だああああああああ!!!!!!!!)
 
7割の方に含まれるなんて真っ平御免だ。ランプの明かりのおかげで、少しは希望を取り戻しつつある。この調子で、トランツェの館目指して進もう!
 
意気込んだのは良いものの、正直自分が今どこにいるか分からない。北に進んでいるのか、東に進んでいるのか、トランツェの館は西にあるのか、既に通りすぎてしまっているのか…。
 
要するに、目的地までの地図が無いのだ。
 
家に忘れたんじゃない。これまで数多くの人に、馬鹿だの阿保だの言われてきたが、さすがにそんな失態は犯さない。
 
最初から無いのだ。封筒には招待状しか入っていなかった。招待状の裏も確認したが白紙だった。
 
(忘れてたのかな…はあぁ、勘弁してよ…)
 
それでも私は仕方なく、目の前の道なき道を、とぼとぼと歩くのだった。
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ