ヤミクモ デイズ

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私の経営する喫茶「憩」は18歳の高校卒業した時から叔父に頼まれたお店。
客層は年配の方が多く、メニューも代々受け継がれてきた伝統あるものだ。

今日も今日とて――――

「暇…」

と闘っている。
ため息ひとつ。暇なのでお店にあるおばちゃん向けの女性誌を流し読みする。
最近テレビを見てないからなかなか情報源になるのよね…。

カランコロン

と、ドアの音がして私は慌てて雑誌を置いて厨房から顔を出すことにした。
お客さんかな、この時間だと藤田さん夫婦がいらっしゃる頃だ。

「いらっしゃいませー」

「こんにちはー幸」

ふわふわとした笑顔を浮かべながら宮子が堂々と入ってきた。
やわらかそうなショートカットの髪にワンピースという女の子らしい恰好をした少女、友人の原田宮子だ。大学の帰りにバイトを頼んでいる。

「相変わらずお客さん入ってないねぇ」
「きっとゲートボールで忙しいのよ皆さんは。
…それより、裏口から入ってきてと何回言ったら分かるの?宮子」

にらみを利かすがマイペースなこの子に効くはずもなく。

「あ、そうだ。目の前のお店ににすごい行列並んでたよ、新しいお店建ったんだね」

なんて、のんびりと…のんびりと行列…目の前のお店…?

「え?なんの事よ」

私のお店の前はついこの間までブルーシートで覆われていた。

「ここに入る前に…はい、チラシもらってきたよ。えーと。あも、あもー、なんちゃら?」

先ほど終わった大学の教材を入れているリュックから一枚の紙を取り出して、読みだす。

横からそれを覗き込んだ。

「カフェ「amour」
素材やメニューにこだわっています。よろしければ一息ついていきませんか?」

と、やたら美味しそうなクロワッサンサンドや見た事のないデザートが載った、チラシ…。
地図もご丁寧に書かれていた。
そう…

私の、喫茶「憩」の目の前だと。

途端、エプロンを脱ぐのも忘れて外に飛び出す。

カランコロン、と音が鳴り目の前に建っていたのは、

「な、なによこれ…」



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