knight

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私の将来は決まっていた。
騎士団に入って、騎士として働くこと。
養子として騎士の家系に引き取られた私は何の疑いも持たなかったしそれが当然であると考えていた。

そして、成人を迎えた…つまり18歳になった私は見習いとして働くことになる。

*****

「番号22番、セシュ・コーラルです。
騎士になってとりあえず安定した収入が得られたらなと思っています」

王城の訓練場にて。
横一列に新人が並べられ、
順番通りに自己紹介を勧められた彼女、
ウェーブがかった銀髪をポニーテールにした少女セシュはそう言ってお辞儀する。


「フッ」

隣で嘲笑するような笑みが聞こえたので少し驚いて横を見る。
見たところ隣は同い年くらいの金髪の少年で、彼が笑ったようだ。
瞳と同じ色をしたピン止めが印象に残る。
少年は不思議そうに見上げるセシュを見て眉をひそめたがすぐに前を向き、一歩前に出た。

「番号23番、アンダンティ・リロズ。知っての通りリロズ家の跡取りだ。
騎士になって家名に見合った地位を目指す。…隣の向上心の無いヤツと違ってな。
言っておくが今の実力もお前たちより強いとは自覚している」

(うーん、今のは喧嘩売られたかな)

と思いつつ彼女は意見せずに前を向く。
リロズ家とはここらの都市で指折りにするほどの大貴族だ。
こんな人の喧嘩を買ったが最後、自分の家系は潰されるなあとつい苦い顔をしてしまったが誰も気にはしなかった。

そして52名全員の自己紹介が終わり、とりあえず今日は解散となった。
だが素直に家に帰る見習いなどいるはずもなく、それぞれ好きなところで職場仲間つくりや昇級したあとの夢を語っていた。

一方、女性で騎士という職業は珍しいため、あまり同性は見当たらない。

(あ。…いた!)

外を出ようとする女性の証である赤い騎士服を着たオレンジ色のセミロングの後ろ姿を見つけ、
友達作りで頭がいっぱいのセシュはやや興奮しながら声をかけようとした。

だが目の前を別の団員が通り一瞬ひるんでしまったため、気づくとその姿は無かった。

*****

結局あきらめた彼女は喜々と新品のブーツで草を踏み、さくさくと音を立てながら裏庭を歩く。
今日は入団日だから本城以外はどこでも出入り可能だ。

「…ん?」

近くで話し声が聞こえる。

「…………声?」

セシュは一度腰に差してあるこれまた新品の剣を確認して、声の方へと体を向ける。
そして今度は音が出ないよう忍び足で声のところへ向かった。





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