未来という名の過去

□第壱話
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(ん?あれは.....。)


彼女の目に映ったの 浅葱の羽織を着た 2人の男。

(新選組のコスプレ.....?
ここ数年の傾向で歴女が増えているとは言えど男の人でも新選組に憧れるものなのね)


こういうレイヤーさんに会ったとき 思わず一緒に写真を撮ってもらいたくなるものだ

踊る胸を抑え 彼女は彼らに声をかけた

「あの....すみません。
一緒に写真を撮っていただけませ──────」

彼らがこちらを振り返った刹那
彼女に本能的に体に電撃がはしる
男の瞳は血のように紅く つい先程まで黒かった髪の毛は既に白く染まっている

(なぜ羅刹がここに?!
あれは物語だけのものじゃないのっ)

だが深く考えている暇などない
早く逃げなければ此方が彼らの餌になるのだ
いくら武術の心得があるとはいえ竹刀すら持っていない女が向かっていったところで 赤子の手を捻るより簡単に殺られる
それでも向かう者は 自殺願望者か恐怖で理性を失った者、若しくは体術に明るい者だ

(正直 今すごく怖い
でも易々殺されてなんてやるものか
苦労の末 合格した大学を入学もせずに終わるなんて 滅相もない
取り敢えずキャリーはここに捨て置いて何か身を守るものを探さなくちゃ)

羅刹は口角を怪しげにあげ こちらに近づいてくる

取り敢えず地面に転がる中くらいの石を素早く手にとり、羅刹の首を目掛けて投げた

運良く喉仏の少し上に当たり 羅刹の呼吸が少し乱れる
その隙に前を少し見ながら間合いをとり 全力で走る


ハッ...ハッ

息が切れる
久しぶりに走るだけあってかなり辛い
つい先日 受験が終わったばかりなのだ 致し方がないであろう



だがちょうど 千本通を曲がったところで その状況に似つかわしくないほど美しく光るものが落ちていた。

それは日本の工芸でもある日本刀である

初めて刀を見たはずなのに どこか懐かしく感じられる その刀

彼女は鞘から刀を抜いて構えた

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