世界一初恋
□今日の空
1ページ/1ページ
「はあ・・・」
「横澤さん、お疲れ様です」
「お疲れ・・・」
外は薄暗くなっていて、少し開いた窓からは冷たい風が入ってくる。
気付いた時には定時を過ぎている。
いつもの事だった。
「横澤、終わったか?」
「桐嶋・・・さん?」
この人が自分の所に来るまでは・・・。
この頃、何かにつけて誘われるようになった。
どうしてかと聞けば、寂しそうだったから・・・と。
あの事が顔に出ていただろうか。
どこか思いつめた顔をしていただろうか。
きっとそうに違いない。
「一服・・・か?」
「まあ」
「じゃあ、ついでに食事して帰ろう」
「えっ?」
「俺じゃ不満か・・・それとも不安?」
「あの・・・」
「ほら、行くぞ」
半ば強引に腕を引っ張られて廊下を走る。
「桐嶋さん・・・」
「何だよ?」
「・・・」
・・・見ろよ、ほら・・・
今日の空は紅く・・・紅く・・・染まっていた。
多分、俺の心も。
END