DOKI-WAKU-BOOKV

□TU-BA-SA
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「木佐さん、どうしてですか?」
「だから、自由にしてやるって言ってんの」
「そんなの」
「お前、一回も望んだ事ねえの?」

それは・・・。
だからって、こんな急に・・・。

その日から木佐さんの顔がこわくて見られなくなった。
あんなに好きだったのに。
木佐さん、俺の声届きませんか?
今の木佐さんの心には。
本当にもう、俺達ダメなんですか?

何があったのだろう。
俺が頼りないから?
俺が年下で我が侭だから?
木佐さん以外の人と笑って話すから?

「雪名・・・」
「は・・・い」
「翼が見える」
「えっ?」
「お前の背中」

木佐さんにだけ見えている。
俺には見えない翼。

でも俺は・・・飛ばない。
どこにも・・・行かない。
ずっと木佐さんの・・・側にいる。

「こんな翼、いりません」
思いっきり服を切り裂いて、自分で自分の体を無茶苦茶傷付けて。

「雪名!」
「俺、木佐さんが好きなんです」
「ゆき・・・な・・・」
「だから・・・」
「も・・・やめろ!」

背中に感じる木佐さんの体温。
痛みと一緒に鼓動を感じて。

「木佐さん・・・」
「雪名・・・」

まるで初めての時のように頬を赤くして。
指を絡めて、唇を重ねて。
そして、木佐さんと俺は・・・。

END

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