Natsuki Fujino

□正義の味方?
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ユリ『ありがとうございましたー。またお待ちしております』

二人連れの客が帰り、店内には私とユリ、オカマ店長の三人だけとなった。

ユリ『片付けておきますねー』
みわ『お願いね〜。やっぱりユリちゃんがいると楽ね〜』

ユリは手際良く、テーブルの食器を片付けている。
私はカウンター席で、グラスを傾けながら手元の資料を見ていた。

なつき『うーん・・・』

考え込んでいるせいか、つい声が出てしまう。

みわ『何よ、なっちゃん。唸っちゃって。もしかして、ア・ノ・日?』
なつき『違うっつーの・・・』
ユリ『そうですよ店長。たしか先生は』なつき『黙れ』

変質者二人を黙らす。
油断も隙もあったものじゃない。

みわ『次、向こうお願いできる?』
ユリ『はーい』

奥に入っていく。
店長は店長で、グラスを拭いたり料理をしたりとそれなりに忙しそうだ。

なつき『ねえ、みわちゃん。もう一人位バイト入れないの?』
みわ『それがねえ・・・どういう訳か、店に来てもくれないのよ。電話で《やっぱり止めます》って。その度にアタシはね、枕を濡らすの・・・』

目をウルウルさせている。
今日に限った事では無いが、カールしたまつげが気持ち悪い。

みわ『いっそ、適当にかっさらってこようかしら?』
なつき『やめなさい』

まともな感覚を持つ人間なら、この悍ましい店構えを見た時点で躊躇するはずだ。
勇気を出して店に入っても、店長がこれでは回れ右で帰ってしまうだろう。

なつき『たまに来る、あのオカマ連中はどうなの?』
みわ『残念だけど、あの娘達は別の店で働いてるの』
なつき『ふーん・・・』
みわ『《手伝おうか?》って言ってくれるんだけど、たまの休みで来てくれてるのにそんな事はさせられないわ』

確かにそうだろう。
ワインを一口飲む。

みわ『今度、久しぶりにあの娘達の所に行こうかしら。ユリちゃん連れてく訳には行かないから、なっちゃんどう?』
なつき『考えとく』

こんな店で働いている時点でどうかと思うが。
唐揚げをつまむ。

みわ『はい、シーザーね』
なつき『どうも』

チーズのかかったレタスを口にする。
まあ、それを黙認してる私も私だろう。
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