Natsuki Fujino

□監督初日
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眠い眼をこすりながら、まだ通い慣れていない道を歩いていた。
天気が良かったのが、せめてもの救いだった。
これで雨でも降っていようものなら、ますます気分がどんよりしてしまう。

今日が私、藤乃なつきにとっての監督初日となる。

急な話だった。
もうすぐ梅雨を迎えようとするこの時期に、私は恋恋高校野球部の監督に就任する事になった。
前の監督が急に辞めてしまったらしい。

恋恋高校。
女で野球に携わっている人間なら、一度はその名前を耳にした事があるだろう。

かつて女子高だった、この高校に野球部は存在しなかった。
共学になった年、有志数名により野球同好会が発足。
その中には、女子選手の早川あおいさんもいた。
まだ少なかった男子生徒を掻き集め、一年後には正式に部として認められ、公式大会への出場も可能となった。

しかし、女性投手の早川あおいさんを大会に出場された事が問題となり、出場停止処分を受ける。
その後、処分が解除されるも女子選手の出場は認められないと高野連から発表があった。

しかし、野球部員を始めとする様々な人の力により、全国に署名の輪が拡がっていった。
テレビや新聞等にも大きく取り上げられ、世論が味方したのも幸いして、ついに女子選手の公式戦出場が認められた。

野球の歴史が大きく動いた一日だった。
私も、署名をした一人としてとても嬉しかった。
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