約束のとき

□望郷の思い
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シンドリアに来て、半年の歳月が過ぎた。
早いものだ―と、部屋から外の景色を眺めながら目を細めた。

私が今いるのは緑射塔の一室。
かなり良い部屋を賜ったようで、調度品からして贅沢なものだった。
一国の王女であった私からしてもそう思える。

とはいえ、イヴァリス王国は小国寡民の地。
王家と言えども、このシンドリアの裕福な家庭と同じくらいの財力しかなかった。

そもそも、人が行き来すること自体が稀なのだ。
迷い人ならばいるにはいるが。

だから国が栄えるかといったら、栄えない。
人間の往来がなければ、栄えるはずがないのだ。
自分たちが暮らしていく分だけがあり、とても満ち足りた国だった。


こうして一人で故郷を偲ぶのは半年前からだった。

しかし、最近は徐々にその時間が減っていた。
傷口が、少しずつ癒えている証拠だった。



それとは反対に、私の心を占めている思いがある。

うんめいのひと。

迎えに来ると言ってくれた、あの人のことだ。
もうすぐ、あの日から十年経つ。
彼は滅びた国を前にして何を思うのだろうか。
いや、そもそもその約束を覚えていてくれているだろうか。

忘れてくれていた方が良い。
忘れて、他の女性と生きて欲しい。

だって、私は守れなかったから。

不思議と胸が痛む。
会ったのは、たった一度きりの人なのに。
恋と呼べるのかわからないこの淡い気持ち。
それが叶わないことが苦しかった。


あなたは今、どこで何をしているの?


小さな疑問は、開け放した窓から溢れて、宙に消えた。








かなり無理やりな気がしますが半年分とばしました。
各々との出会いも書く必要があるのでしょうが、それを書くと進行が遅くなるので…
これから出会っていくキャラもいる予定なので、そこに期待して頂けると嬉しいです。





 

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