Kira's LoveStory*
□聖夜の奇跡
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――その少し前。
「このホールって、ステージだけじゃないんだね」
「はい。修復作業の際にフロアを増設して頂きましたの」
「すごいねぇ」
ドリンクを傾けながら嬉々としてパーティー会場を見渡す少年が18歳という年令よりも幼く見え、ラクスは小さく笑う。
「クス。...キラは本当に可愛らしいですわね」
「え!?何それ?」
心外だと言わんばかりの彼を微笑みで制し、ラクスは尚も続ける。
「そういえば、カガリさんとアスランはまだ、お見えになられていないようですわね?」
「あっそうだった!さっきカガリから連絡があって、少し遅れるって」
「そうですか。...ではキラを守れるのは、私だけなのですわね」
ニコリと微笑んだ彼女はキラの傍らに寄り添い、腕を絡ませる。
「守るって...?逆じゃないの?僕がラクスを守る、でしょ?」
「まあ!その言葉はとても嬉しいのですが、キラは知らなさすぎますわ」
「へ?何を?」
意味深な発言を聞き返そうとしたところ「ラクス様」と呼ぶ声に遮られた。
「何か問題でもありましたか?ダコスタさん」
「例の件で、お話が...」
「あらあら?残念ですわ。もう少しキラとお話していたかったのですが...」
「行って来なよラクス。僕はここで待ってるから」
名残惜しそうな彼女の背中をキラはそっと後押ししてやる。
「はい、行ってきますわ。ですが、キラ...野獣にはくれぐれもお気をつけ下さいませ」
ラクスはあまりにも自分の容姿に無自覚なキラに一応注意を促し、ダコスタと共にその場を離れた。
彼女の後ろ姿を見送りながらキラは呟く。
「野獣って...何だろ?」
「キラさーん!!」
ラクスと別れた後、すぐに駆け寄って来た人物に、キラは頬を緩める。
「シン」
「メリークリスマス!!キラさん!」
紅い瞳が印象的な彼とは、消す事の出来ない因縁の仲だった。
だから戦後、思いがけなく彼のほうから親しげに接してきてくれた時は、本当に嬉しかったのだ。
「シン、パーティー楽しんでる?」
「はい!すごくっ!!それで俺、キラさんと話したくて!...隣、いいですか?」
「僕なんかでよければ、喜んで」
今ではすっかり弟のような存在に微笑みかける。
シンは話題に豊富で話していて楽しいし、コロコロ変わる表情は見ていて飽きない。
「そういえば...キラさん、この後予定ありますか?」
「ん?特にないけど...どうかした?」
「いえっ!その......」
「どうしたの?」
急に押し黙り頬を赤らめるシンの顔を心配そうに覗き込んだ瞬間、キラの頬に温かいものが触れた。
「!シ、シ、シン!?」
一瞬で離れたそれは明らかにキスで。突然の事にキラは狼狽える。
「すみません、いきなり...。でも、それが俺の気持ちです!」
「......ぇ、ぁ...」
「それで...もし良かったら......今夜、一緒に過ごしませんか?」
「!!!」
追い打ちをかけるように告げられた内容に、驚きの連続でキラは思考を停止させる......。
そこへ一人の少女が勢いよく割り込んできた。