Kira's LoveStory*

□恋桜
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「桜は好きだけど...、見てると淋しくなる...」

桜が咲く丘の上で出会った綺麗な人は、菫色の瞳を揺らめかせ、泣きそうに笑った...。



*恋桜*


大きな戦争があった。
とても大きくて哀しい戦争が。
それによって、俺は大事な家族を失った。
悲しくて、認めたくなくて。

それでも自分の生まれた国だからと、戦後はオーブへと戻った。
身寄りのなかった俺は国が用意してくれた住居に住み、孤独を紛らわすために、がむしゃらに働いた。
けど...、やっぱり心はいつも空虚で。
仕事帰りや休日には、居場所を求めて街をさまよい歩く日々が続いた。


そんなある日の休日、たまには遠出をしてみようとバイクを走らせた。
そして、見つけたんだ。
温かい場所、優しい人を――。

そこは一面、桃色の世界。
マユ...、妹の好きな色だったからバイクを止め、自然と足を動かしていた。
丘の上に咲き乱れる桜の大木。
その下に、あの人はいた。



「君も、桜を見に来たの?」

話しかけられた瞬間、心臓がどきりと高鳴った。その優しい微笑み、透き通るような穏やかな声に心が囚われる。

「あ、はい...。桜、好きなんで」

絶対うそだ。
今まで花なんか見向きもしなかったのに、口をついて出たのはそんな言葉で。

「そうなんだ。ここの桜は新しく移植されたものなんだって」
「そうなんですか」
「うん、元の桜は燃えちゃったからね...」
「......」

オーブは戦場になって、ほとんど燃え尽きた。家族の命も一緒に...。
あの時の惨状が脳裏に蘇り、目の前が真っ赤に染まる。怒りの感情が湧き上がってきて、ぐっと拳を握り締めるていると、彼がぽつりと呟いた。
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