Kira's LoveStory*

□Spark of love
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空に月が昇り、夕闇が迫る刻。

ザフト軍本部棟の外では多くの軍人が集まり、軍には不似合いなほど馬鹿騒ぎをして盛り上がっていた。
常ではありえない様相の理由は、現在進行形で執り行われている平和記念式典の為で。
今日は特別に羽目を外すのを許されていた。それでも何かあればすぐに対応できるように備えてはいるのだけれど…。


―同時刻。
本部棟の廊下を白服の裾を翻し、颯爽と歩く青年が一人。
口元に笑みをたたえた彼の足取りは心なしか浮き足立っていた。
彼は、とある一室の前で立ち止まると扉をノックした。

すると、すぐに中から「誰だ」とぶっきらぼうな一言が返された。

「僕だよ、イザーク」
「キラか…入れ」
「お邪魔しま〜す」

そうして部屋に入ると、外ではすでに陽が沈みかけているというのに部屋の明かりは点けられておらず。
デスクのライトだけが光々と光り、部屋の主の銀髪を明るく照らしだしていた。

「うわ、電気ぐらい点けようよ〜」
「放っておけ、それより何か用か?」
「あ、そうだった!もうそろそろ花火が始まるから呼びにきたんだ、それにっ…」
「…悪いが片付けたい書類があるんでな」

キラの台詞に重なるように出された面白くない返事にキラは口唇を尖らせた。

「む〜、そんなの明日でいいいじゃないか!」

キラはイザークが座るデスクに歩み寄り、置かれていた書類を取り上げた。

「おいっ!何をする!」
「今日はもうお仕舞いっ!だから花火見に行こう?」

キラが悪戯っぽく微笑むとイザークは小さく息を吐いた。

「…仕方がない。今日はお前に付き合ってやる」
「やった!じゃあ早く行こうよ」

キラがイザークの腕を掴もうとしたが、逆に掴まれて動きを封じられる。

「?イザーク、何?」
「外に出ずともここから見える」
「えっ!そうなんだ!知らなかった!」

キラはイザークに腕を引かれて窓際に移動する。
そうして二人、すでに陽が落ちた夜空を眺めた。

「もうそろそろ始まるかな?」
「ああ」
「ねぇイザーク、さっき言い忘れたんだけど…」
「?」

「誕生日おめでとう」

キラが告げた言葉と同時に一発目の花火が打ち上がり、二人を明るく照らしだす。

「…よく覚えていたな」
「当たり前だよ!だって好きな人の誕生日を忘れるわけないだろ!…あ」

勢いあまって自分の言ったことに恥ずかしくなったのかキラは俯き口を閉ざす。
イザークはそんな彼を見下ろすと「フ...」と小さく笑った。

「キラ」
「……」

呼び掛けても顔をあげない彼の頬にそっと手を滑らせる。
ビクリと震えたキラの髪に口付けると耳元で優しく囁いた。

「ありがとう」
「……うん」

はにかみながら漸く顔をあげたキラは、絡み合う視線をそのままにイザークの口唇に自分のそれを静かに重ねていった。


end.
@2007.8.11#改訂2009.6
 

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