Athrun×Kira LoveStory*

□虹色なみだ
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「うわ、雨だ!最悪〜」

後ろの座席から聞こえてきた少女の声に、キラは口にしていたカップをソーサーに戻し窓の外を見上げた。
さきほどまで曇っていただけの空からは、雨が小さな粒となって降り注いでいる。
「雨って、ホント憂鬱になるよね〜」尚も雨が嫌だと話し続ける少女たちを背に、キラは時計を確認して席を立つとカフェを後にした。


傘は持っていたけれど、差さずに降りしきる雨の中をゆっくりと歩いていく。周りから奇異な目で見られても気にせず、黙々とエアポートを目指した。
雨水はやがて全身をぐっしょりと濡らしていく。しかし、キラは髪から垂れる水滴を拭いもせずに足を運ぶ。


二度の戦争で多くの人の命を奪い、この体にまとわりついた血の匂いを、少しでも雨が洗い流してくれるのではないだろうかと淡い期待を抱いて...。

(そんなこと、赦されるはずもないのに...)

すでに死者の血は染み付いて離れなくなっている。それは己の命が果てるまで背負っていくべき業。
覚悟は決めていたけれど、時折こんなふうに不安定に揺らいでしまう。
キラは重い心を引きずり、冷たい雨に打たれながら早く彼に逢いたいと思った。

唯一、この心を預けられる人に。



エアポート前は乗客や迎えの人たちでごった返し、色とりどりの傘がひしめき合っていた。

「きれい...」

ぼーっと立ち尽くして眺めていると、その群衆の中からキラを呼ぶ声がした。そちらに視線を移すと、逢いたかった彼が視界に飛び込んできてキラは口元を緩める。
どんなに大勢の人々の中からでも彼だけは見つけられる自信があった。

「アスラン...」

小さく彼の名前を声に出して、溢れる愛しさに泣きそうになる。

(早く、来て。僕の傍に。)

「キラ!?お前っ、何やってるんだ!ずぶ濡れじゃないか!」

アスランもキラに気づいたようで、驚きに目を見開いて自分の傘を差し向けてきた。

「ちょっと傘持ってろ!」

「もう意味ないと思うけど...」

「いいから!」

すでに全身はずぶ濡れなのに、彼は律儀に鞄からハンカチを取り出してキラの顔を拭い始めた。

「ほら、自分で拭いて」

「...ごめん」

「謝るくらいなら傘ぐらい差せ」

「ごめんね、アスラン」

言うなりキラは傘を放り出してアスランに抱きついた。じわりとアスランのスーツに雨の染みが広がっていく。
怒られることは覚悟していたのに、いつまで経ってもアスランからの叱責はなく、彼は黙ってキラを抱きしめてくれていた。

「...君も、濡れちゃったね」

「いいさ。キラの涙だと思えば全て受け止める」

優しいアスランの声が耳に届き、そっと顔を上げたキラは美しい翡翠に囚われた。
この宝石のような瞳が昔から大好きでキラはうっとりと微笑んだ。

「...すき」

自然と零れた愛の言葉をアスランに唇ごと奪われる。

雨の冷たさも、心の傷みも、全て甘く溶かされ掻き消えた。


end.
2010.6.20

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