Athrun×Kira LoveStory*

□Vestige+
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――逢いたかった。

深い哀しみの底で望んだのはただ一つ。

逢って、君の綺麗な瞳を見たいと願った。だから、嬉しかった。
涙でいっそう輝きを増した緑の瞳がとても綺麗で。
その色を忘れないようにと大切に焼きつけた。
僕の世界で一番好きな色を...。





ふと意識がクリアになって目の前に白い光が飛び込む。眩しくて目を閉じようとして初めて、自分が瞼を動かせること、呼吸をしていることに気づいた。

(僕...生きて、...ここは?)

何度か瞬きをして、改めて周囲に視線を巡らそうとしたが、体のあちこちに痛みが走って上手くいかなかった。
ここは病室のようだった。どこもかしこも白く殺風景な部屋に置かれたベッドの上に自分は寝ていた。窓から差し込む陽の光が白い部屋に反射している。不思議な気持ちだった。

天国でも、夢の中でもなくて、僅かな消毒液の匂いと、痛くて動かすのも億劫な体に生きていると実感させられる。その事実をゆっくりと飲み込んでいく内に涙が溢れ出し、頬を滑り落ちた。

(アスラン...)

あのとき焼きつけた緑の瞳を思い起こして、彼のことを想う。

(アスラン...アスラン、何処にいるの?...)

熱い涙が幾筋も流れ、喉が引き攣れる。泣き虫だなと言って慰めてくれる幼馴染は此処には居ない。
もう、頼ることも出来ないのだ。自分たちは小さな子どもではないのだから。
いま、この瞬間にも彼は彼の時間を生きている。その隣で笑っているのはきっとカガリだ。二人の幸せそうな笑顔が思い浮かんで、また涙が溢れた。

(...痛い、胸が痛くて苦しい)

止まない嗚咽と目を閉じても次から次へと溢れ出す涙にどうすることもできなかった。
けれど、シュンッと扉の開く音にぎくりとして涙が止まる。入ってきた人物は無言のままベッドサイドへと近づき、キラの顔をのぞきこんできた。

「...あ、」
「気がついたようだな」

見たこともない人だった。涼やかなアイスブルーの瞳が凛と光り、肩口で切り揃えられた銀の髪が綺麗で、歳は同じくらいだろうか。
しかし、彼の顔面には痛々しいほどの大きな傷跡が刻まれていた。食い入るように見つめるキラの不躾な視線を気にするでもなく、彼は口を開いた。

「どうして泣いていた?どこか痛むのか?」

すっ、と彼の冷たい指に頬の涙を拭われる。その優しい仕草にアスランを重ねてしまい、思わず彼の手を掴んでしまった。そうしてからハッと自分のしたことを恥じて、慌てて手を離す。

「ごめ...なさ...」

無意識とはいえ自分の幼稚さを嫌悪した。が、彼は逆にキラの手首を掴み、さらには手の甲にキスをされてしまった。キラは驚いて彼の顔を凝視する。

「美しいものは嫌いじゃない」

ふっ、と瞳を細めて笑った彼は、初めてイザーク・ジュールだと名乗った。



continued...

2010.03.08@少しずつ書き進めていきたいと思います。

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