Athrun×Kira LoveStory*

□手向けの花束を
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「知ってた?アスラン。お墓って、残された者の為に存在するんだって」
「聞いたことはあるな。生者の心の拠り所みたいなものだと...」
「うん...だから、ここに彼女は居ない。それなのに、どうしてか懐かしい気配がするんだ......フレイ..」

キラは溜め息のように少女の名を口にすると、黄昏に染まる空を見上げて、菫の瞳を閉ざした。


フレイ・アルスター。
死して尚、キラの心を捕らえて放さない少女にアスランは苦々しい思いを抱く。
キラのことが好きで、振り向いて欲しくて...。
だが、彼の心の中にはフレイという少女が居て、自分の居場所などないんじゃないかと、弱気な思考が邪魔をして想いを告げられずにいた。

いま、現実に、キラの目の前に居るのは自分なのに...。
この世に居ない少女にキラは囚われたまま...。

この先も永遠に?

そんなのは嫌だ!と、あふれる思いが爆発しそうになり、いまだ瞳を閉じて佇んでいるであろうキラに視線を向けた。

「...っ、」

いつもと違う光景がそこにあった。
普段ならアスランが声をかけるまで、その場を動こうともしないのに、キラはこちらをじっ、と見つめていたのだ。

深い菫が夕陽の朱と交わり揺らめいていて、ぞっとするほどの魔性の美しさに息を呑む。

「......アスラン」
「......キラ...?」
「...アスラン..」

いつも自分の名を呼ぶキラの声に僅かな違和感を覚えた。
キラはこんな風に自分を呼ばない。まるで赤の他人の名を口にするかのように...。
不信感に眉をひそめるアスランに、キラはクスリと蠱惑的に笑んだ。

「......ふーん、あなたがアスランね。いい男じゃない」
「キラ、じゃないな。君は...」
「ええ、そうよ。私はキラじゃない。でも......傷ついて、苦しんでたキラをよく知ってるわ」
「お前は誰だ?キラを解放しろ」

キラの精神を乗っ取った何者かは淡く微笑むと、右手を空へと高く掲げた。

「私は...キラの幸せを望むもの。ただ、それだけよ」

『トリィ!』甲高い鳴き声と共に、黄緑色の機械鳥が掲げられた手を目指して舞い降りてくる。それを確認したキラであってキラでない者は、トリィをアスランに向かって差し出した。

「あなたにキラの心を渡すわ。...と言っても、キラは最初からあなたのものだけれど」
「どういうことだ?」
「そのままの意味よ...。キラはずっと、あなた一人を想ってた」
「そんな、そんなのは嘘だ...キラが俺を......」
「それは直接キラに聞いてみれば分かることでしょ。はい」

トリィをアスランに託すと、悪戯っぽく微笑む。その表情は楽しげで、少し憂いを帯びていた。

「キラを幸せにしなきゃ許さないんだから...」

キラの瞳がゆっくりと閉じられると、一筋の涙が零れ落ちた。

果たしてその雫はどちらのモノだったのか。


「キラ」

呼びかけに応えるようにキラは瞳を開く。そしてハッとしたように辺りを見回してから、ほうっと息を吐いた。

「キラ、大丈夫か?その...」
「うん...。でもフレイに怒られちゃった」
「フレイ?」
「ん...。もう心配かけちゃ駄目だね...彼女にも、アスランにも。それに僕を取り巻く、たくさんの人たちにも」
「そうだな、俺はキラの傍にずっと居るよ」
「うん、ありがとう。...大好き」

キラは背伸びをすると、アスランの唇にそっとキスをしてきた。



『キラ、幸せは自分で手に入れるものなのよ』


end.2009.6.3

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