Athrun×Kira LoveStory*

□0518〜風の行く先〜
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アスランはいつもキラが好きだと言っていた海岸線沿いを捜しまわった。彼はいつも一人になりたい時は浜辺にいたから...。

(キラ...)

天気は快晴で頬を撫でる潮風が心地よかった。
一瞬、足を止め沖のほうを眺めていると、ふいに一陣の風が吹き抜けた。
あまりの強さに顔を逸らし、再び上げると...。
そこには風が連れてきたかのように儚げな少年がひとり立ち尽くしていた。


「...キ、ラ」

突然の事に声が掠れる。
キラはパジャマにしているTシャツにカーディガンを羽織っただけで、足下も裸足のままだった。

「キラッ!」

もう一度呼ぶと、今度は聞こえたらしくキラがゆっくりとこちらを振り返った。

「......アスラン?」
「キラ!」

居ても立ってもいられなくなったアスランはキラの傍へ駆け寄ると華奢な身体を抱きしめた。


「アスラン、ど...して?」
「お前が居ないからっ!だから捜しにきたんだろっ!」
「心配しなくても大丈夫だよ。そろそろ帰ろうと思ってたし...」

そう言うと、するりとアスランの腕から逃れた。そしてまた、ぼんやりと海を眺め出すキラに溜息を吐く。

「キーラ、帰るぞ」
「うん...」
「キラ?一体どうしたんだ?」
「別に...何でもないよ。ただ、海が僕を呼んでたから」
「はぁ?!」

キラが心底、何を言っているのか分からない。
けれど......。

「......在るべきところに帰れって」
「!」

翡翠の瞳を見開いたアスランはキラの腕を掴むと、強引に顔を上向かせ乱暴に口づけた。
逃げようとするキラの細い腰を抱き込み、更に深くキスを交わす。
ここでキラを離したら、彼を永遠に見失いそうだったから。
現実に繋ぎ止めるには強硬手段しかないと判断しての行動だった。

どれくらいそうしていただろう、ようやく唇を離すと銀糸が二人を繋いでいた。
頬を桃色に上気させたキラがさっと顔を背ける。


「キラ。キラの在るべき場所は此処だろ?」
「此処に居て...いいのかな?」
「当たり前だ!」

ぎゅっとキラを抱き寄せて、ぬくもりを分かち合う。

「ん...ありが、と」
「ラクスも、みんな待ってるから帰ろう。..っと、そうだ」
「アスラン?」

さっき、キラの元へと駆け寄った際に投げ置いた花束を取りに戻り、キラに差し出した。

「誕生日おめでとう、キラ」
「!...アスラン、これ...」
「キラに...似合うかなって」
「...っ、アスラン!!」

キラはアスランの胸に飛び込んだ。
嬉しさのあまり、止めどない涙がキラの頬を伝う。

「ありがとうっ、アスラン!」
「キラ、もう何処にも行くなよ」
「うん...」


――あたたかな涙はやがて冷えきった心を癒すだろう。


end.
2006.5.18/改訂2009.6
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