Athrun×Kira LoveStory*
□幸せの距離
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「でも、通信越しには会ってるから...。これ以上、贅沢言えないよ」
「画面と生身じゃ違うだろ?」
「だけど、アスランに迷惑かけるのは...」
弱々しいキラの答えに、シンの中で何かがプチッと音を立てて切れた。
「あ〜も〜!聞いてましたか?!アスランさん!!」
「え?アスラン??」
突然、立ち上がったシンは後ろを振り返った。すると、扉の向こうから私服姿のアスランが姿を見せる。
「キラ」
昨日も通信越しに聞いた優しい声音。
「アスランッ...!」
キラは居ても立ってもいられずに愛しい人に駆け寄った。アスランはそんな可愛い恋人を温かく受け止め、抱きしめる。
「キーラ、元気ないって聞いたから心配したぞ」
「うん、ごめんね。でも、大丈夫...」
「大丈夫、じゃないだろ」
アスランは優しく目尻にキスをして、今にも零れそうな涙を拭い取った。
「淋しかった...」
「うん」
「ずっと会いたくて...。抱きしめて欲しかった」
「キラ」
今にもドラマ並みのラブシーンを始めそうな二人に、シンは咳払いを一つして、この場を退散しようとする。それに気づいたアスランが声をかけた。
「シン!キラのこと、ありがとう」
「お礼なんていりませんよ、キラさんだから助けたまでです。では...」
ふいっと、少し赤らんだ顔を逸らしてシンは食堂を後にした。
「アスラン?もしかして、シン...」
「ああ、最近キラの顔色が悪いって連絡くれたんだ」
「そっか...シンにも心配かけちゃったね」
シンが出て行った扉を見つめ続けるキラ。その様子に、ほんの僅かの嫉妬を覚えたアスランがキラの顎を捉え、こちら側に向かせた。
「キラ、今は俺のことだけ考えて?」
「...アスラン」
見つめ合ったまま、アスランはキラの唇に触れるだけの優しいキスを落とす。顔を離せば、ふんわりと花が綻ぶようにキラが微笑んでいた。それに微笑み返すとアスランは口を開いた。
「キラ、もう少し情勢が落ち着いたら...」
「何?」
「一緒に暮らそう」
「...っ!!?」
「これ以上キラを不安にさせない為にも...」
「...あ、えと...」
驚きと嬉しさで胸がいっぱいで、何て返せばいいのか分からずに言葉に詰まる。だけど答えなんて、すでに決まっていた。
「キラ?」
「すごく嬉しい。けど...いいのかな?」
自分だけ、こんなに幸せな気持ちに浸っているけれど。
「僕、アスランの重荷になってない?」
「そんなことあるわけないだろ。俺だってキラと離れてる間、淋しかったんだぞ」
アスランが照れ臭そうに笑い、額をこつんと軽く小突いてきた。それに「ごめん」と笑って、彼の懐に顔を埋める。
「アスランの匂いだぁ」
「クス、なんだそれ?」
いつも求めていた彼が目の前にいて、あんなにも淋しかった心が満たされていく。それに何より、アスランも淋しいと感じていてくれたことが嬉しい。優しく髪を撫でてくれる彼に擦り寄るように甘えた。愛しい気持ちが伝わるように...。
「キラ、明日オフだろ?一緒に出かけないか?」
「アスランも休みなの?」
「俺は今日から三日間、休暇取ったから」
「あ、だから私服なんだ」
「そういうこと。...二人で暮らす家も探しにいこう」
「うんっ!」
僕たちの新しいスタートは今、始まったばかり...。
end.
2007.2.27