Athrun×Kira LoveStory*
□雨の中、ふたり。
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シトシトと小雨が降り続いている。今日の気象は雨に設定されていた。
アスランは窓から視線を逸らすと、読みかけの本を手に取った。
―静かな昼下がり。
だが、その静寂は次の瞬間には跡形もなく消え去ることになる。
バタンっと激しくドアを開け放ち、部屋に入ってきたのは少女のような容姿を持つ幼なじみ。彼は満面の笑みを浮かべて、開口一番こう宣った。
「出かけよう!」
正直、彼の突拍子もない言動には慣れていたつもりだが、今回は少しばかり頭を抱えた。
「...キーラ、今日の天気は雨なんだぞ」
「知ってるよぅ!でも出かけたいの!」
「...これから雨足が強くなる。それに出かけたかったのなら、昨日行っておけば良かったんだ」
「だって......」
しゅんと俯く幼なじみに溜息を零す。
そんな哀しそうな顔をしたってダメだ。
「だって、じゃないだろ。昨日あんなに晴れてたのに、俺の誘いを断ったのは誰?」
「う......」
そう、昨日は気持ちいいほどの快晴でキラと出かけようとしたのに、彼はTVゲームにのめり込み、コントローラーを手放そうとしなかったのだ。
少し可哀想に思うが、心を鬼にして読みかけの本に視線を戻した。
しばらくの沈黙の後、ぽつりとキラが呟く。
「アスラン......ダメ?」
「......」
ちらりと窺えば、今にも大きな瞳から涙が零れ落ちそうで。
どうして自分はこんなにもキラの涙に弱いのだろうかと思う。まぁ...これもひとえにキラに惚れた弱みなのだろうけれど。
「...いいよ、仕方ない。今回だけだよ」
「ホントっ!?やったぁ!アスラン大好きっ!」
ガバっと抱きついてくるキラに心臓が跳ねる。
無邪気な君には振り回されてばかりだ。
「それで?行きたいところは?」
「ううん、どこでもいいんだ」
「はぁ?」
「あのね、僕...。実は......アスランと相合傘してみたかったんだ!」
「〜っ!!?」
「友達が自慢するから僕もやってみたかったんだ〜、ってアスラン聞いてる??」
最早、アスランの耳にキラの声は届いていなかった。
end.