Athrun×Kira LoveStory*

□宝もの
3ページ/3ページ


波の音さえも聴こえなくなった。

その静けさの中で自分の心音だけがどくりと大きく音を刻み、やがて世界が音を取り戻す。

「ア、スラン...」

震えた声に自分が泣いていると自覚する。どうりで目の前のアスランが滲んで見えたはずだ。

「驚かせて、すまない。しかも泣かせてしまったな」

アスランは困ったように笑いながら、キラの涙を拭った。

「今のは忘れてくれていいから」

「嫌だっ、そんな、の...出来ないよ」

「キラ?」

アスランの言葉が何回も頭の中をリフレインしている。


――『俺はキラが好きだ。』


確かに彼はそう言った。それを忘れてくれだなんて出来るわけがない。

宝物の蓋はすでに開けられた後なのだから。

「僕、僕も君が...アスランが、好きなんだ!」

「!っ、キラ...それって、」

「ずっとずっと好きでっ、でも言えなくて...っ」

「......俺もだ。ずっとキラだけを想ってた」

そっと、アスランがキラを抱きしめてきた。その腕の中、キラは彼の温もりに甘える。

あんなにも遠く感じていたアスランが、今自分を抱きしめてくれていることに幸せを噛み締めて。

穏やかに打ち寄せる波が耳に心地よく、二人に言葉はもう要らなかった。

紫と翠の瞳が絡み合い、夕闇の中、二つの影が一つに重なっていく。

それは切り取られた影絵のように美しかった。


end.2008.6.13
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ