未来へのオーダー

□1.始まりはオムライス
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――そういう訳で三人でレストランへ来たのだけれど...。


やっぱり出来ればキラさんと二人きりで来たかったな〜と、ぼんやり考える。
いつ好きになったのかなんて曖昧で、でも一緒に暮らしていく中で彼の心に触れて自然と惹かれていった。
この気持ちはまだ打ち明けられずに胸の奥に大切に閉まったままだ。


「...ン?...シン?」
「えっ?うわぁっ!」

いきなり目の前に現れたキラさんのドアップに思わず驚いてしまう。
好きな人の顔が間近にあるなんて心臓に悪すぎる。
ドギマギする俺を余所にキラさんはきょとんとしている。

「どうしたの?シン?」
「や、ちょっと考え事してて、すみません」
「ううん、ねっ!それより何にするか決めた?」
「あっ、俺は昨日言ってたオムライスで」
「ふふ、一緒に食べようって言ってたもんね!じゃあさ、デザートは?僕、なかなか決められなくってさ」
「(あぁ、デザートで悩んでたのか)...俺はいいです」
「なんで?!」

目をまん丸にして聞いてくる様子に思わずプッと吹き出してしまった。
時折みせる可愛らしい姿も彼を好きな理由だったりする。

「いや、なんでって...」
「シンは子供じゃないんだよな、キラみたいに」

アスランさんがキラさんの頭にポンと手を置いてからかう。

「なっ!?僕だって子供じゃないよ!」

ぷぅと頬を膨らませて怒るキラさんの仕草にも、好きだなぁと改めて感じる。
彼の一挙一動に振り回される自分は嫌いじゃない。

「キーラ、怒るな?」

アスランさんが優しく髪に触れて機嫌を取る。
見慣れた光景に悔しくは思う、けどきっと二人は昔からこうだったのだろう。
あまりにも自然すぎて、入り込む余地なんてない。

「怒らせたのは君でしょ!もぅ!今日はアスランのおごりだからねっ!」
「はいはい、初めからそのつもりだけど?」

クスッと笑ったアスランさんと目が合うと「すまない」という様な顔をされて、愛想笑いを浮かべる。
キラさんはメニューにかじりついて何を注文しようか思案している。
たぶん高い料理を選んでアスランさんを困らせるつもりなのだろう...。

「シン!君ももっと注文しなよ?アスランがいくらでも奢ってくれるんだって!」

どんな我が侭にもアスランさんは嫌な顔ひとつせず受け止める。
むしろニコニコと微笑ましいというようにキラさんを見守っていた。

二人が固い絆で結ばれているのを目の当たりにする度、間に割って入る隙なんて無いじゃんかと溜め息を吐きたくなる。
アスランさんと張り合っても勝ち目はないのに....。

一見、無謀で馬鹿みたいに思える自分だけど、この恋を諦めたくはない。
だって恋は障害があるほうが燃えるって誰かから聞いたから。


――大切な想いは秘めたまま。

でもこの先、俺がアスランさんを越える男になったらキラさんに伝えようと思う。

――「好きだ」と。

そう心に誓うと、愛しい人の顔を心ゆくまで見つめ続けた。


end.
up@2006#改訂2009.4.8
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