Athrun×Kira ParallelStory*
□やわらかな光に包まれて
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外の空気はひんやりと冷たく、海岸沿いを歩きながらキラは小さく体を震わせた。
夜空にはたくさんの星が輝いていてるけれど、水平線の彼方はほんのりと明るい。もうすぐ年明けの太陽が昇ろうとしているのだろう。
早く太陽が顔を出し、少しでも暖かくなればいいのに…。
寒さに震えながらキラは思う。だけど決して口にはしない。
だって、少し前を歩く幼なじみに聞こえてしまうのはマズいから…。
初日の出を見に行こうとアスランを誘ったのはキラで。外に出る際、彼に「もっと厚着をしていけ」と忠告されたのに「平気だって!」と、キラは全く耳を貸さなかった。
が、薄手のセーターにジャケットを羽織っただけの恰好ではさすがに寒くて、キラは即座に凍りついた。
ほら、みろ。と、声には出さないがアスランの呆れたような顔に何だか無性に腹が立って。
キラは家から海岸までやせ我慢をして歩いてきたのだった。
アスランはくるりと振り返り、溜め息をついて家を出てから初めての言葉を発した。
「だから言っただろ、薄着すぎるぞって」
アスランは存外に言ってくる。
「だって…」
口を尖らせつつも完全に自分に非がある状況でキラは何も言い返せずに俯くばかり。
「キーラ…」
またアスランが溜め息をつく。子供の頃みたいにそろそろ雷が落ちるな、とキラは身構えた。
けれど予想に反して、アスランは巻いていたマフラーをふわりとキラの首に巻いてくれたのだ。
「アスラン…、怒んないの?」
「…お前は怒ってほしいのか?」
「え゛!いや、そういうわけじゃないけど…」
「なら、行くぞ」
アスランはキラの手をとると、先を急ぐように歩き出す。
吐きだす息は白く、気温の低さを物語る。だけど繋いだ手のひらは暖かくて、キラは知らず微笑んでいた。
「このあたりでいいか」
アスランが立ち止まり、水平線の彼方を見つめた。キラもそれにならい、同じ方向を眺める。
もうすぐ太陽が昇る…。
「あ!」
感嘆の声をあげたキラは、金色の眩い陽の光が零れ出すのを見つめた。
嬉しくて隣を見上げればアスランは穏やかな微笑を湛えていた。
「今年もよろしく、キラ」
「うんっ!よろしく、アスランっ」
ほんのり暖かい陽光に包まれながら、二人は優しいキスを交わしあった。
end.
2008.12.31
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