Athrun×Kira ParallelStory*

□ももいろ
2ページ/2ページ


にっこり笑ったキラの顔を瞳に映して、ゆっくりと視界を閉ざす。
目を閉じれば必然的に聴覚が敏感になり、まわりの学生たちの騒ぐ声や靴音が耳に入ってくる。

そんな雑踏の中、キラが間近に動いた気配がして、ふっ..と下唇に何かが触れた。そして、ツイっとなぞるように動かされる。

いつもより冷たいキラの指に思えて、心臓がドクリと音を刻んだ。

「キラ...」
「ふふっ、まだ開けちゃダメだよ」

イタズラっぽく笑ったキラは、さらに上唇にも触れてくる。
これはなんの罰ゲームだろうと浮かんだ感想は、微かに桃の香りを漂わせて離れていったキラの所為でどうでもよくなった。

いま最も気がかりなのは、キラがどういう意図でこんなことをしたのかだ。

「アスラン、もういいよ〜」
「...キラ、今のはなんだったんだ?」

キラなりのスキンシップだとでもいうのだろうか?
クスクス笑うキラが、じゃ〜ん!と擬音つきで差し出したのは、ピンク色の可愛らしいリップクリーム。

「アスラン、唇荒れてたから塗ってあげたんだよ」
「お前...そんなもの持ち歩いてるのか?ピンク色って女子の持ち物みたいな...。いや、似合うからいいけど」
「ちょっとアスラン、似合うとか勝手なこと言わないでよ!これは今日、フレイに貰ったの!」
「ふ〜ん、フレイね...」

フレイは自分たちと同じクラスの気の強い女子だ。キラのことがお気に入りな様子で、何かと邪魔をしてくるから厄介だった。

「もう〜アスラン、ヤキモチ妬かないでよ」
「別に妬いてなんか...」
「だって、眉間にシワ寄ってる...でもっ、ぷっ..!あははは」
「な、なんだ?」

突然、笑い出したキラを訝しげに見やれば、笑いを耐えつつ話しだす。

「くくっ、今のアスランになら怒られても怖くないよ〜可愛いし」
「はぁ?!」
「ピンク色、意外に似合うかもね」

その言葉が示す意味を瞬時に読み取ったアスランは、手の甲で己の唇をぐいっと拭い、付着した色に絶句する。

どうやら先程キラが塗ったリップクリームは色付きだったらしい。

「キラっ、お前っ!」
「わぁっ!怒んないで!まだ続きがあるんだから!」
「なんだよ続きって、もう目はつむらないぞ」
「うん、そのままでいいよ」
「えっ...」

キラが少し背伸びをして、柔らかい唇が自分のそれと重なり合った。


甘くて優しい...
ももいろのキス...

end.
2008.12.21
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ