Kira's LoveStory*

□恋桜
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「桜は好きだけど...、見てると淋しくなる...」


そうして満開の桜を見上げる姿が儚くて、消えてしまいそうだった。
だから何か言わなきゃ、と咄嗟に出た言葉は自分が思っていたのよりも酷く子供じみていた。

「あのっ!良ければ、明日も俺と一緒に桜見ませんか?」
「え?」
「そのっ...、あなたさえ良ければの話で...」

何言ってんだ、俺。
この軟派っぽい台詞は...。恥ずかしさに頭をガシガシと掻く。
でも彼は笑いもせず、にっこりと微笑んでくれた。

「ありがとう、嬉しい。君となら淋しさも紛れそうだよ」

切なげな表情のまま微笑む彼の本当の笑顔が見たいと強く思った。
それぐらい惹かれていた。
出会ったばかりで、名前も知らぬ存在に――。

どこからか「トリィ〜」という電子音が聞こえ、緑の小鳥が彼の肩に降り立つ。
よく見るとそれは、精巧に出来た鳥型のロボットのようで。
その小鳥を慈しむように彼は撫でた。

「綺麗な鳥ですね」
「...うん、僕の親友が作ってくれたんだ」

一瞬、彼の表情が曇ったように見えた。
でも、あえて見ない振りをした。
だって理由を聞けば、彼が離れていってしまいそうで。

怖かったんだ。
せっかく見つけた優しい人を失いたくなかった。
二人の影が濃くなり、太陽が傾き始める。

「そろそろ日暮れだね...。じゃあまた明日、ね?」
「はいっ!!」
「クス、元気だね。えと、僕はキラ・ヤマトです」
「俺っ、シンっていいます!シン・アスカ!」
「シン君。...よろしくね」

すっ、と差し出された繊細な手を固く握り返す。

「明日13時にこの場所で。...いいかな?」
「はいっ!」

これがキラさんと俺の出会いだった――。





翌日、あまり眠れなかった俺は早起きして早々に支度を始めた。
別にデートってわけでもないけど(第一キラさんは綺麗だけど男の人だし)。
でも何故か、服選びに慎重になってしまう。
適当に食事を済ませると、キラさんにお土産を買っていこうと思い、買い物に出かけた。こんなにも楽しい気分になったのは久しぶりだ。

何がいいか散々悩んだけど、結局マユのおすすめだった洋菓子店のマフィンにした。
キラさん、甘いもの好きかな?なんて想像したりして、変に舞い上がってしまう。
ショーウインドウに移る自分を見つめて、背はどっちが高かったっけ?とか、
そういえばキラさんって何歳だろう?とか、
ずっとキラさんのことが頭から離れない。

そうこうしている内に約束の時間は迫ってきた。
バイクに跨がり、キラさんとの約束の場所へと走らせる。

昨日と同じくらい、今日もいい天気だ。


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