Athrun×Kira LoveStory*

□あなたへ贈る歌
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本当のことを言えば、いつまでも貴方と共に在りたかった。

貴方の傍で、貴方からの愛を望んでいた。


でもそれは叶わぬ願い。

貴方の心の中にはずっと彼だけが居たから。


あなたへ贈る歌。。。



「ではキラ、私はこれで」

キラの肩に預けていた頭を離すと、彼の真正面に立つ。

「ラクス」

優しく繊細なキラはこちらの想いに気づいているのだろう。整った顔を切なげに歪めている。

「キラ、そんなお顔なさらないで下さいな」
「でも...ラクス、君が居たから僕は戦うことが出来た。それなのに僕は、君を...」
「いいえ、キラ。私が居なくとも貴方は貴方だからこそ戦えたのです。それに私はキラから、たくさんのモノを戴きましたわ」


形ではないモノ。
優しく彩られた言の葉たち。
唯一欲しかった心を手には出来なかったけれど......。

「...貴方は彼、アスランと共に在るべきなのです」

努めて明るく微笑む私に、キラは今にも泣きそうな顔。涙で潤み始めたアメジストの瞳が綺麗で。
でも今、この場では笑っていてほしいと願ってしまうのは最後の小さな我がまま。

「キラ、笑って下さいな」
「っ...、ラクス」

もう迎えのシャトルが来るだろう。その前にせめて、貴方の笑んだ顔が見たかった。


その時――

「キーラ、泣くな」

馴染みのある声がキラの背後から聞こえた。

「アスラン...」
「また泣いてるのか?」

エメラルドの瞳を優しく細めながら、キラの頭にポンポンと手を置く。

「!泣いてなんかないよっ」
「泣きそうなんだろ?」
「違っ!アスランのバカッ!」

先程まで涙で潤んでいた瞳が嘘のように輝きを取り戻し、口を尖らせて拗ねたキラに二人は苦笑する。それにつられてキラも照れ臭そうに笑った。

ああ、ほら、こんなふうにアスランがいるだけでキラは本当に幸せそう。瞳がきらきらと輝いていて、有りのままのキラを引き出せるアスランが羨ましい。
それは私には出来ないことだから...。だから、キラを託すと決めたのだ。

海岸の方へ飛び立ってしまったトリィを、キラが追いかけて行くのを見送りながら、アスランに向き合う。

「アスラン、キラと二人にして頂いて有り難うございました」
「いえ。ゆっくり話せましたか?」
「ええ。プラントに戻ってからだと、しばらくは忙しくて会えそうにありませんからね」
「落ち着いたら、キラと会いに行きます」
「楽しみにしていますわ」

その頃にはキラを想い人から友人として受け入れられるだろうか。そんな少し未来(さき)のことに想いを馳せていると、アスランが口を開いた。

「...ラクス、プラントを頼みます」
「はい。それはもちろん。...私からも一つ、お願いが有るのですが宜しいですか?」
「なんなりと」
「......キラの笑顔が曇ることのない、幸せな日々を」
「ええ。何があっても守り抜いてみせます」
「ありがとう」


そうして約束を交わした二人は海岸へと視線を移す。その先にはキラが手の甲に羽根を休めるトリィの頭を優しく撫でていた。
その表情は穏やかで、綺麗な微笑みをたたえていた。


もう二度と離れることのないように。

幸せになって欲しいと今はただ、願うばかり...。

どうか、どうか、私の歌が貴方に幸せをもたらしますように......。

この祈りを歌にのせて。


end.
 

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