無自覚な恋
□無自覚な恋◆2.侵入者
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――それって、要するに恋でしょ?
言われた意味を理解するのに数秒...。
けれど徐々に飲み込み始めた内容に、ただただ茫然とするしかなかった。
だって考えたこともなかったんだ。
血の繋がった「兄」に恋してるなんて...。
×無自覚な恋2×
「いや、ありえないから!!」
「はぁ!?誰に聞いたって同じこと言うわよ」
「けどっ!恋っ、なんて...」
「なによ、全力で否定しなくたっていいじゃない。好きなんでしょ?その子のこと」
兄であるキラに対するモヤモヤが何なのか、クラスメートのルナマリアにオブラートに包んで相談した結果がこうだった。
「で?相手は誰なのよ?」
「...俺っ、帰る!」
「あ〜!こらぁ!逃げるんじゃないわよ、シン!」
ルナマリアの怒声を背に受けながらシンは教室を飛び出した。
今は何も考えられなかった。
否、考えたくなかった。
こんな状態のまま普段通りに授業を受ける自信なんてなくて、シンは早退しようと昇降口をめざす。
その間も頭の中にはルナマリアの言葉が何度もリフレインする。
『それって、恋でしょ』
キラのことは好きだけど、恋なんかじゃない!
これは単なる家族愛なんだ!
必死に否定の言葉を並べて気持ちを誤摩化して...。
シンは真実から目を背けようとしていた。
勢いのまま早退してしまったシンはどこかで適当に時間をつぶそうとしたが、足は自然と家の方角へと向かっていた。
父親は仕事でいないし、母親もパートに出ていて早退を咎められることはないだろう。
けれど、そんなことはシンにとってどうでもよかった。
脳裏に浮かぶのはキラの顔...。
シンは毎朝、キラの体調を確認してから登校するのが日課だった。
今朝は昨夜からの微熱が続いていて起きるのも辛そうにしていた。
それでも彼は「いってらっしゃい」と微笑んでくれたのだ。
――キラに会いたい。
その強い想いを裏付けるようにシンは家までの距離を走り出していた。