未来へのオーダー
□2.バースデーケーキ
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今日は久方ぶりの休暇だったが、いつもの習慣で目覚めてしまった。
キラはまだ眠っているだろうかと、壁越しに気配を窺ってみる。
部屋が隣同士とはいえ、恋人なのに同室では眠れないのがもどかしい。
同居することになったシンのことを考慮してなのは分かるが、正直つらかったりする。
毎朝、目覚めた瞬間にキラの顔が見たいと思ってしまうのは仕方のないことだろう。
けれど、同じ屋根の下で暮らせることに感謝しなければいけないのも事実。
アスランは軽く頭を振ると手早く着替えを済ませ自室を出た。
この家のルールなんて無いに等しいが、朝食は一番に起きた者が用意することになっていて、おそらく今朝も自分だろうなと考えながらリビングの扉を開けた。
すると、海を望める大きな掃き出し窓が開け放たれていて、爽やかな朝の空気が室内を満たしていた。
鳶色の髪がふわりと揺れる。
(ああ、キラか)
軒先に座り込んでいる恋人は機械鳥のトリィを肩に乗せたまま、穏やかな海を見つめていた。
「キラ」
「あ、おはよアスラン」
にこりと振り返った彼は未だ、その場を動こうとしない。
しかもどうやらパジャマのままだ。
いくら5月半ばはといえ、朝方は冷える。
そんな薄着でいたら風邪をひいてしまうかもしれないのに。
まったく、いくつになってもキラはキラだな...と思いつつ、もの凄く気になることを問いかけてみた。
「お前、いつから其処にいたんだ?」
「う〜んと、夜明け前かな?」
「バカ...、風邪ひくだろ」
「意外と平気だよ」
けろっとして答えるキラに溜め息が出てしまうが、そんなのも含めて好きなのだからどうしようもない。
ワガママで甘ったれで......本当に変わらなく愛おしい。
「キラ」
「何?」
きょとんと振り返るキラを後ろから優しく抱きしめた。
その拍子にトリィがキラの肩から飛び去っていき、蒼い上空を悠々と旋回する。
「あはっ、トリィ楽しそう」
「キーラ、トリィは後でいいから」
「なんだよ〜、もしかして嫉妬?」
「...そう、どんなモノにも嫉妬してしまうんだ。キラが好きだから」
「アスラン...」
キラのライラックの瞳が切なそうに揺れ、音もなく静かに見つめ合いながら唇を重ねた。
「..んっ......ふっ」
甘い甘いキラの口腔を思う存分堪能してから解放すると、キラは耳まで朱に染めて呼吸を落ち着けようとしていた。
朝から、こんな濃厚なキスをしたのは久しぶりで体が疼いてしまうが、理性を総動員してキラの髪にくちづけを贈った。
――忘れてはいけない大切な言葉も一緒に...。
「誕生日おめでとう、キラ」
「ありがとう、アスラン」
***
「ったく〜...俺の存在、忘れないでください!」
「ハハ、悪いなシン」
「それよりケーキ作るんでしょ?手伝います」
「ああ助かるよ」
「別に...キラさんの為ですから」
end.
キラ!誕生日おめでとう!...シンの出番が;@2009.05.24