未来へのオーダー
□1.始まりはオムライス
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向かいの席には、キラさんの真剣な顔。
彼の視線は手に持っているレストランのメニューに向けられたままで。
さっきから眉間に皺を寄せ、う〜〜んと唸っている。
何をそんなに悩んでいるのか...。
聞いてみようと思ったときには既に遅く、キラさんの真横からもの凄く甘い声がかけられた。
「キーラ、そんなに悩むことじゃないだろ?」
「うっ、だってアスラン!どれも美味しそうなんだもん!」
「また、いつでも連れてきてやるから」
「ホント!?約束だよ!」
「ああ...」
仲睦まじい二人に見てるこっちが照れてしまう。
アスランさんだって普段は絶対見せないような笑顔で。...正直、居心地が悪い。
それなのに何故この場に俺が居るのか。
――話は昨日の夜に遡る。
夕食後。
ソファに凭れて寛いでいたキラさんが雑誌を見ながら騒ぎだした。
「ねぇねぇ、シン!ここのレストランの料理、どれも美味しそうだよ〜!」
たまたま隣に座っていた俺の腕をクイクイと引っ張る様が、なんとも可愛らしくてニンマリしてしまう。
「キラさんはどれが食べたいんですか?」
「うーんと僕はねぇ〜...あっこれ!このオムライスがいいなぁ」
「あっそれ美味そうですよね。俺もそれがいいな」
「わぁ!やっぱり?食べたいよねっ!」
そう言われてハッとする。
これは食事に誘うチャンスでは?!
(頑張れ!俺っ!)
キラさんに密かに好意を寄せている俺は、いつか好きだという気持ちを伝える為に少しでも距離を縮めなくてはならないと、意を決して口を開く。
「キラ」
名前を呼んだのは突如やって来たアスランさんで、俺は出しかけた声を呑み込んだ。
「アスラン!いいところに来た〜!」
「なんだ?一体」
「ここ行きたい」
キラさんが雑誌の一ページを指差して示す。
「...ふーん、最近できたのか。なら明日行ってみるか?」
「えっいいの!?」
嬉しそうなキラさんにアスランさんの顔も綻んでいて。
甘いムードにこれ以上いるとお邪魔虫になりそうな気がして、不本意ながらも退出しようとソファから立ち上がりかけたが、そんな俺にキラさんが声をかけてきた。
「やったね!シン!」
「え?」
「シンも行きたかったんだよねっ!」
「えぇっ?!!」
「さっきのオムライス、一緒に食べようよ!」
ニコッと微笑うキラさんに、すぐにでも「ハイ!」と答えたいけれど、アスランさんの刺すような視線が痛い。
明らかに二人のデートに邪魔な俺を避難する目だ。
「やっ、俺はいいです」
「え〜なんで?...僕と行くのは嫌?」
(そんな訳ないじゃないかー!)と、心の中で叫びつつ「っ違います!」と、きっぱり断言する。
するとキラさんは、ふんわり嬉しそうに微笑んだのだ。