宝物@

□to one's hand
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「ここ…か。」

地下の研究室を探していた蛮は、廊下に倒されている壊れたドアを前にして歩みを止めた。
背筋をゾクゾクと震わせている、経験に裏打ちされた『第六感』が、危険を訴えている。

−−確実にいやがるな。突っ込むか?いや、待てよ…。

逡巡していた蛮は気付いていなかった。
すでに、『モンスター』の脅威が迫っていたことに…。


「な…。」

蛮は、足に絡みつかれて、ようやく蔦の存在を知った。
目の前の大きな気配に気を取られ、足元を音もなく近づいてきていたこの細い蔦には気づけなかったのだ。

「このっ。」

食い千切ろうと、腕を振り上げた瞬間、驚異的な力で引きずられ、蛮は尻餅をついてしまった。
そして、そのまま薄暗い室内に引きずられて行った。

「これは…。」

思わず言葉を失う程、『モンスター』は、蛮の想像を遙かに越えた化け物だった。
天井を擦るくらいの体長。本体と言える部分は、蔦ではなく、まるで巨木だ。
そこから、何本もの蔦が枝分かれし、不気味にその身を揺らしていた。
『モンスター』は、蛮を引きずりながら、更に蔦の本数を増やし、蛮の四肢を捕らえ、高々と持ち上げた。


−−このまま、易々と絞め殺されて堪るか。


蛮は深く息を吸い込み、

「今こそ汝が右手に、その呪われし命運尽き果てるまで…」

呪文を詠唱し始めた。


−−だが。

「うぐっ。」

まるで、その詠唱を遮るようにして、四肢を拘束する蔦よりも太いものが、蛮の口腔に突っ込んできた。

「んんっ……ふ、ぐぅ…。」

口腔内を嬲るように、蔦は舌の上を這い回り、上顎を撫で、内側から頬を突く。

−なんだよ、これじゃ。まるで…。

蔦の太さや固さが類似しているせいだろうか。
蛮は男性器を奉仕させられている錯覚に陥っていた。
じわじわと蔦から滲み出る樹液の青臭さが、何処か精液を彷彿とさせ、蛮の感覚を更に麻痺させていく。

ふと、依頼主が『モンスター』に組み込んだ電子頭脳には、父親の性格などがベースになっていると言っていたのを思い出した。

−まさか、こういう趣味の持ち主だったって事か?
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