宝物@

□魅惑のfruit
3ページ/5ページ

それから、噛み締めている蛮ちゃんの口をこじ開けて、舌先からコロリとブドウを入れた。
蛮ちゃんの口の中に渡った一粒のブドウを、押し入れた舌で掻き回すように転がした。
互いの舌と舌の間で挟み合って、奪うように、手渡すようにブドウを追っているうちに、キスだけじゃ味わえない濃密な快感が産まれてくるみたいだった。
夢中になって力の抜けた所を、バナナがさらに深く突き上げた。

「んっ……あぁ………っ。」

押し殺し切れずに上がった声。
それから、すぐに廊下を小走りに近づいてくる足音が聞こえてきた。

「どうしました?天野さん。」

看護士さんが向けた懐中電灯の灯りに、眩しくて思わず瞳を細めた。

「ごめんなさい。お腹空いちゃって。」

バスケットを抱えて、俺はわざとらしい仕草で、口に残っていたブドウをモグモグと食べた。
布団で蛮ちゃんの下半身は隠したから、見えてないみたい。
バナナをくわえ込んだ蛮ちゃんの背後に、看護士さんを重ねて見るのは、もの凄い眺め。
蛮ちゃんにだけわかるように意地悪く微笑んだ。

「消灯時間はとっくに過ぎてるんですから、勝手な事されたら困りますよ。」
「はい。ごめんなさい。」

そうやって、反省したように謝りながら、パックに入った苺を一粒取り出して、天を仰いでいる蛮ちゃん自身の先端を突っついた。

「……んーっ。」

手の甲に唇を押し付けて、どうにか声を押し殺す事が出来たみたい。

「どうかしました?」
「なんでもないです。喉につまっちゃったみたいで。」

俺の動きを止めるよりも、声を耐えるだけで精一杯って感じで、ただ涙色の瞳で睨み付けてくる。
でも、俺は構わずに、更に鈴口に割り込ませるように、苺の先端でグリグリと刺激した。じわりじわり、染みてくる汁が苺に絡んで、何だか厭らしい。

「………っ。」
「じゃあ。ちゃんと寝て下さいね。付き添いの方もお願いしますよ!」
「はい。おやすみなさい。」

震えるように蛮ちゃんも頷いて、看護士さんは部屋から出て行った。遠ざかる足音を確認して、蛮ちゃんは深く長く息を吐き出した。

「何しやがんだ。てめぇは!バレなかったからよかったもんを。」
「それは、ほら。やっぱり、イチゴには練にゅ…ごめんなさい。もう、言いません。」

俺の頭には、蛮ちゃんの踵落としが綺麗にヒットしていた。更にぐりぐりと踵が押し付けられる。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ