宝物@
□例えば、こんな一日
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例えば、そう…
こんな一日があってもいい。
「蛮ちゃん。なんか、起きるのも面倒だね。」
「あぁ。でも、腹減ったな。」
「ルームサービスでもとろうよ。」
「だな。」
二人は疲れ切っていた。
今回の依頼は、潜入捜査紛いの仕事で、一週間程身分を偽って過ごさねばならなかった。
バレては奪還どころか、命の危険もある。
二人は常に緊張状態を強いられていたのだ。
その仕事が終わったのは、つい昨日の話。
緊張から解放された二人はホテルに着くなりベッドにダイブし、そのまま寝てしまった。
「三日は何もする気も起きねぇな。」
ううん、とスラリと細い手足を伸ばして、柔らかなベッドに大の字を描く。
「ねぇ、蛮ちゃん。」
動物のような仕草で、銀次が蛮の胸元に擦り寄ってきた。
猫撫で声の意味するトコを蛮はわかり過ぎる程わかっていた。
「起きるのも面倒って言ってなかったっけ?」
「それとこれは別だもん。一週間以上シてないんだよ?」
鈴を鳴らすように笑う蛮とは違い、銀次はまるで死活問題と言わんばかりの真剣さだ。
「じゃあ、俺を口説いてみせろよ?合格点だったらいいぜ。」
艶やかに濡れる唇が誘うように歪む。