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□オワリのハジマリ
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―終わったんだ……

目の前に立つ美しい姫君。彼女が奏でるオカリナの音色に包まれながら青年―リンクは思った。

―全て、終わったんだ…

―嗚呼、もう姫様が見えなくなった……

―帰るんだ、7年前に…

―帰って、森に戻って…

そこまで考えて、ふと思考を止めた。

―森に戻って…どうする?

―俺はハイリア人。いずれは森を出ていかなければならない。

―じゃあ、何処に行けばいい?

―ハイラル城のゼルダ姫に会いに行く?…いや、姫様には迷惑かけるわけにはいかない。

―じゃあデスマウンテンやゾーラの里は?…ダルニアさんもルト姫は、もういない。行っても無駄だ。

何度も何度も考えた。でも、答えはひとつしか出てこない。

―俺の居場所は、もう何処にもない……

―ナビィ、これからどうしよう?……ナビィ?

辺りを見渡すが、パートナーである妖精はいない。

―ナビィ…ナビィ……!

いくら呼んでも彼女はいない。リンクは悲しくなって涙を流した。

―ナビィ……嫌だよ………1人は……嫌だよぅっ………!

『1人は嫌か?』

突如響いた声に、リンクはびくっと肩を震わせた。思わずマスターソードを構える。

―っ誰だ!?

『なんだ、さっきまで泣いてたのに、案外威勢のいいやつだなぁ』

―ぅっ……

そう指摘されたリンクは急いで涙を拭った。

『まぁそれはさておいて、お前に用事があるんだ。時の勇者、リンク』

―!どうして俺の名前を!?

『ふふ…私は何でも知っているのさ』

クスクスと笑う謎の声。

『リンク、もう少しだけ旅を続けてみる気はないか?』

―…旅?

またあの孤独な旅に出ろというのか。また、大切な人達を失えというのか…。

少しだけ動揺しているリンクに、声は続ける。

『違う。それは大いに違うぞリンク。失うんじゃない、手にいれるのさ!』

―手に、いれる……?

『そう!お前が失ったモノを手にいれるんだ!…そのまんま同じモノを手にいれるのは出来ないがね』

そのまんま同じモノ…これはきっとサリア達6賢者やコキリの森の我が家、そして、ゼルダ姫を指しているのだろう。

『新しい場所で新しい仲間達と会ってみないか?勿論、無理にとは言わないさ』

―……………

もうサリア達に会えるとは思ってもいない。そして帰っても自分の居場所はもう何処にもない。かえって好都合なことなのかもしれない。

―………わかりました。行かせてください。

『よし!いい返事が聞けて嬉しいよ!さぁ、行こう!』

その声を聞いたのち、リンクの意識は途絶えた。
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