桜の花弁

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「――あのぉ…斎藤さん?」

「なんだ」

「斎藤さんはどうして私の部屋にしつこいほど来るんですか?」

「稽古に参加するように言っても聞かないからだろう」

「いやそうじゃなくて…」



稽古に参加して欲しいから。
ただそれだけの理由じゃない気がした。



「何か他に理由があるんですよね?」

「…何故そう思う?」




…理由……?
そう聞かれるとちょっと悩んでしまう。




「えっと…。何となくっていうか…普段あまり感情を面に出さない斎藤さんですけど、私をこうやって稽古に誘う時だけは、なんか嬉しそうなような…ちょっと寂しげなような…。不思議な表情をするんですよね」

「………」

「何となく!!ですからね!私の思い違いだったらすいません!!」




私が理由を言った時、斎藤さんはちょっと驚いた顔をしていた。
まるで心を見透かされたような表情を。



「斎藤さん…?」

しばらくの間、斎藤さんは瞳を見つめていた。

青い綺麗な瞳は私の目を捉えているけど、見ているのは私じゃなくて――。
瞳の奥にいる誰か他の人を見ている気がした。



「斎藤さん…!どうしましたか?」



私が呼び掛けると、斎藤さんはようやく私の声が聞こえたようだ


「……っ!…すまない」

「…誰かを思い出していたんですか?」

「いや、気にするな」

「気になります!…もしかして女性ですか!?この前女性には興味ないって言ってましたけど、やっぱり女性なんですね!!」

「そんなはずないだろう」

「じゃあ何なんですか?教えてくれるまで、私退きませんよ」




―――すると斎藤さんは、仕方ないという感じで溜め息をつき、そのことについて話してくれた。








―――――



 
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