桜の花弁

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―――襖の向こうから鳥の鳴き声が聞こえる。
もう朝なのだろうか。
夕季は重い瞼を開く。
自分の部屋と同じ和室だったため
一瞬、自分の部屋にいると思ってしまったが、いつもと違うその部屋を見て肩を落とす。



「やっぱり…夢じゃないんだ――」



全てが夢だったら良かったのに。
いつ戻れるんだろう――。
そう思いながら再び寝ようと頭に布団を被せる。


――すると、急に襖が開く。


「おはよう、夕季ちゃん。僕が起こしに来てあげたのにいつまでも寝てるなんて、ちょっと失礼なんじゃないかなぁ」


この声は…
夕季は布団から顔を覗かせる。



「沖田…さん?」

「そうだよ。いつまで寝てるつもり?普通なら居候は誰よりも早く起きたりして、朝飯くらい作るものだと思うんだけど」

「…わかってます。でも今はそんなこと考えられません。私、寝起き悪いんです…」

「全く。子供だね、夕季ちゃんは。早くしないと新八さんにご飯取られちゃうよ」





…眠い、とにかく眠い。
寝起きが悪い私は沖田さんの言うことを無視して再び寝ようとしたが、昨日の夜から何も食べていないことに気付き、仕方なく身体を起こす。




「あ、そうそう。これ土方さんが君にって」
 

そう言って沖田さんが私に渡したのは着物と袴、それに晒し。


「あの…これは――?」

「そんな格好じゃこの時代では変すぎるでしょ。それに土方さんに引きこもってろって言われたからって、本当にずっと引きこもってるわけにはいかないし。」

「まぁ…そうですけど…」

「つまり、屯所では男装してもらうってこと。着方、わかる?」

「はい。着方…前に祖母に教えてもらってなんとなくわかります」

「そう。じゃあ着替え終わったら広間に来てね」



そう言って沖田さんは部屋を出て行った。





―――――




 
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