走れサヤス

□第1章 サヤスの決意
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サヤスは激怒した。
必ず、かの悪戯非道の果実を除かなければならぬと決意した。
サヤスにはそもそもミカン君というものが分からぬ。

サヤスは、村人Aである。リコーダーを吹き、妖怪と遊んで暮らしてきた。
けれどもミカン君に対しては人一倍に敏感であった。それはもうじんましんが出るほどであったという。

今日未明サヤスは村を出発し、野を越え山越え、十里離れたシマントの市にやってきた。
サヤスにはペットも、お金もない。ごく普通の家庭で平凡な暮らしをしている。

サヤスの家の養子は、村のある誠実な村人Bを、近々、花婿として迎えることになっていた。結婚式も間近なのである。
サヤスは、それゆえ、花嫁の衣装やら祝宴のごちそうやらを買いに、はるばる市にやってきたのだ。

まず、その品々を買い占め、それから都の大路をぶ〜らぶらした。
サヤスには竹馬の友があった。
タマヌンティウスである。今はこのシマントの市で、ニートをしている。
その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
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