04/29の日記

14:21
10番
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ミーンミン

夏休み真っ盛りの今日この頃、グラウンドに響き渡る蝉の鳴き声、

そして…蝉の鳴き声よりもうっとおしい松風天馬の声が響き渡ると同時に
俺は地面にバタッと音をたて倒れた

暑さに耐えきれなくなった俺は目をとじる

サッカー部の皆が俺の名前を呼ぶ

俺はそこで意識を失った






ガバッ

「あれ?」

目が覚めると俺は保健室のベッドで寝ていた

勢いよく起き上がったせいか頭に衝撃が走った、俺は頭を抱えた。


ガラ


カーテンが開く音がしたのでそちらを見る


そこには最も背が高くてムカつく後輩、剣城京介が居た

俺は剣城を睨んだ、

剣城は俺の事を見て口を開く

なんだよ、チビとでも言いたいのか、言いたい事があるなら言え、馬鹿野郎

「…大丈夫ですか?」

そう言って近くにあった椅子に座る剣城。


ちぇ、なんだよ、胸くそわりぃな…

「別に」

俺はそっぽを向いて言った

実は言うまでもないが剣城が来てくれて嬉しかった

「よかった…」

剣城はニコッと軽く微笑んだ

…っくそ…調子狂うぜ


保健室はエアコンが入っていて涼しかった

俺は少し寒くなったので布団に潜り込んだ

…そういえば前にもこんなことあったなぁ…

俺が朝練の途中で熱を出して保健室で寝込んでた時

南沢さんが看病してくれたっけ


*3ヶ月前

「全く…無茶しすぎだ。」

椅子に座っていた南沢さんは俺の頭を軽く叩いた、

俺は熱のせいで顔が熱かった

「お前顔が赤いぞ、照れてるのか?」

南沢さんはニヤニヤしながら言った

「熱のせいですよ、馬鹿」

熱のせいだった筈なのに

南沢さんが看病してくれるという事に浮かれていた

俺は恥ずかしくて

布団に潜った


南沢さんは「倉間ー?」と何回も名前を呼ぶが

俺はわざと聞こえないふりをしていた

南沢さんが看病してくれる事が何よりも嬉しくて感動のあまり布団の中で泣いていた

するとそれを察したのか南沢さんが布団を捲ってきた
俺は咄嗟に枕に顔を埋めた

泣き顔なんて見られたくない、泣き虫だなんて思われたくない。


「倉間…お前…どうして泣いてんだ」

「泣いてません、汗です!!」

そう言い張る俺。

観念したのか南沢さんはだまりこんでしまった


俺は涙が止まったので

南沢さんの方を見た


ギュッ


突然抱き締められた


「は、離れてください、風邪うつりますよ!?」

全身の熱が一気に顔に集中するのと同時に

唇になにかが触れた

どうやら南沢さんがキスしてきたらしい





唇が離れた


俺は頭からボフンッと熱が出た


「…お前の熱ならもらっても良い」

南沢さんは口に手を当てて呟いた










「…い?…倉間先輩!!」

俺は布団から出て
ハッと目を見開く

俺は剣城の方を見た


すると剣城は安心したかのように胸を撫で下ろした


「なぁ、剣城」


「何です?」


「俺帰るわ」


そう言って俺はベッドから降り

ガラステーブルに置いてあったスクールバックを肩にかけ

帰ろうとした

けど、腕を掴まれて
歩けない

「お大事に」


剣城はそう言って俺の頭をポンッと軽く叩いた

一瞬、胸が高鳴ったのは気のせいだよな

俺は保健室を後にした







*翌日

昨日から何故かモヤモヤする



気付けば剣城の事ばかり

南沢さんの事はすっかり忘れていた

俺は授業を終えて荷物を纏める


すると

「くーらまっ!!」

「倉間君、部活行きましょう」


同じクラスのサッカー部、浜野と速水が俺の席へとやって来た


「ああ」



俺達は部室へと向かった


そして

部室の扉へ足を運んだ時


部室から

「どういうつもりだ剣城!!」
サッカー部のキャプテン、神童拓人の声が聞こえた


俺達は顔を見合わせて首を傾げた

剣城がまた何か仕出かしたのか


部室に入った


そこには
剣城と神童と霧野と松風と西園と狩屋がいた、三年と影山の姿は見えないが。

すると狩屋が俺に手招きをしたのでそちらへと足を運んだ



「剣城君が退部するそうなんですよ、それでキャプテンが、」


狩屋は小声でそう言った


ああ…成る程


俺は可哀想な奴なんだ


南沢さんという大好きな先輩を無くし

剣城というお気に入りの後輩までもが居なくなる


俺はまた独りぼっちになるのか


そうだ、剣城はもともと、俺達、雷門サッカー部の敵だったんだ

それなのに…俺…



「…バカみてぇ」


俺はそう呟いて部室を抜け出した












どうして剣城は俺に近づいてきたんだよ

単なる好奇心?向上心?


ふざけろ、俺はそんなのに付き合ってられる程、暇人じゃねぇ



俺はグラウンドの隅にある木の下に座り込んで泣いていた


自分に嫌気がさした


「…南沢さん…ッ」


そっと大好きだったあの人の名前を呟いた

「……先輩」

後ろから声が聞こえて
ふと振り返ってみると

剣城がいた

「な…何しに来たんだよ…」

俺は意地を張る


「先輩が心配で…」

ほら、そうやって優しくするから俺は靡くんだ


「でも俺…シードだから…移籍するんです」



「剣城君」

音無先生の声がしたかと思うと
剣城は俺に一礼して
走っていってしまった


「どうして…どうしてだよ…なんで10番ばかり居なくなるんだよ…!!」


俺は地面に膝をついて泣いていた










*翌日

神童に言われた

剣城はもう雷門には居ないと。


そして俺はまた独りぼっちになった


いつも通りの一日を過ごした



*一週間後

今日は空を見上げても雲一つない晴天だった。


3人で部室へ行った


「倉間、浜野、速水!」


神童は俺達の方に振り返る

俺達は座った


「今日は紹介したい人が居る、出てこい、天川」

神童の掛け声?と同時に一人の男子が入ってきた



「こいつは新しく入った天川、自己紹介よろしく」

「へい、俺は天川光(アマカワ ミツル)、二年、サッカーとは小さい頃からの付き合い、ポジションはFW、よろしくな!」

その天川という男はショートヘアで薄紫色の髪で真っ黒な目だった
そしてまだユニフォームはもらってないらしく
学ランだった


パチパチ

部室に歓声が響き渡る


「っち…気に入らねぇ…」

俺はボソッと呟いた


すると天川が俺に近寄ってきた


「お前もFW?一年だよな、よろしく」

手を差しのべてきた

俺はその手を握って笑顔で言った


「俺は二年だ」



と。


その後、天川は10番のユニフォームをもらったらしく
俺に見せてきた

性格的には
南沢さんに似ているからか
少し親近感を感じた。

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