霞の向こうの話
□桜、舞い散る風の中で
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新八が支度を整え出て行くと、平助はすでに外で待っていた。手には敷き物にするであろう布。新八が来たことに気付くと、笑いながら、
「じゃ、しんぱっつぁん、行こっか〜」
と嬉しそうに歩き出す。
春の暖かな日差しの中を二人、並んで歩く。隣りに新八がいる。ただそれだけで平助の顔は緩んでしまう。本人に自覚はないのかもしれないが。隣りを並んで歩く平助の、そんな表情を見ながら、あぁ、こいつ、馬鹿だなぁ…と新八は思う。
穏やかな春の風が二人の間をすり抜けてゆく。
ふと、思い付いたように平助が言う。
「ね、しんぱっつぁん。お団子でも買って行こっか♪」
俺が団子好きなのを知ってて提案する平助。まぁ、平助も団子好きだけどネ。
「そだネ」
そうして、二人で団子を買って、桜に向かって歩いて行く。
しばらく、進んだところで
「あれ、ここ曲がるの?」
と俺は平助に向かって尋ねた。いつも行っているところは、この道をもう少し直進しなければならない。しかし、平助は途中で左折したからだ。てっきり、いつも皆で行っている桜の名所と言われているところに行くと思っていた俺は、思わず聞いてしまった。
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