霞の向こうの話

□桜、舞い散る風の中で
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今日は非番。永倉新八は自分の部屋で本を読んでいた。
のどかな春の一時。しかし、その静けさを破るかのように遠くから足音がこちらに向かって近付いて来る。
この足音の正体は…って、考えずとも分かるけどネ。どうせあいつデショ。


「ねぇ〜、しんぱっつぁ〜ん」


やっぱりネ。こいつも今日非番だしネ。

部屋に来て挨拶もなしに、いきなり新八に話掛ける平助。まず、挨拶くらいしろよなとも思ったが、いつものことなので改めて突っ込む気にもなれず、新八は先を促すことにした。


「なにヨ、平助」


「花見、行かない?」


今は桜の盛り、おまけに今日はぽかぽかした陽気。ともなれば平助の提案もごく自然なものなのだが、新八は少し訝しげに平助を見て聞き返す。



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