読み物の部屋

□製作中
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 それは、ここへ来て5年
 何の問題もない静かな朝のことだった。

 カムルが
 いつものように早朝の祈りを済ませ、軽く身体を動かしていると、神殿の中から 赤い髪の
 エルフの女性が手を振りながら出てきた。

「カムルっ おはよう!今日も早いわね」
「おはよう、エスナ。
 はは、朝の空気は澄んでいて気持ちいいから
 寝ているなんてもったいなくてね」
「わかるわ〜
 鳥の鳴き声が綺麗だし、まだ出歩いてる人も少ないから落ち着くしね」

「じきに、うるさくなるさ」
 突然後ろの茂みから、声がする。
「レジース!
 何してるのよそんなとこで!」
 カムル一人でいるのを見つけてせっかく来たのに。
 邪魔された
 とでもいわんばかりに声を荒げて言う。
 すっぽりと茂みに隠れるように見えないでいた彼は、立ち上がり
 およそこの朝の空気に不似合いな姿を晒した。
「いたらわるいのかよ。瞑想してたんだ。
 おいカムル。お前番をしてやるって言っておきながら、こんなこうるせー女としゃべってんじゃねーよ」
「こうるさい女って何よ!
 ひどいわ!」
「あ、あはは・・
 すまないレジース。つい。
 邪魔して本当にすまなかった。
 エスナも、ごめんよ」
「・・カムルが謝ることないのよ!レジースが勝手なんだから」
「ケッ
 あー ウゼェ・・
 俺は戻るぜ。いくらでも話してやがれ」
 ふいっ と
 神殿へと歩き出す。
「レジース!」
 追いかけようとするカムルの腕を、エスナが掴む。
「放っておいていいのよ。レジースはいつもああなんだからっ・・
 一人でいるのが好きだっていってるし。
 ムリしてかまうことなんてないのよ」
「エスナ・・」
 彼は、形の良い眉をひそめ
「レジースは、いいヤツだよ。
 ちょっと、素直じゃないだけで。
 今のは私が悪かったんだ。彼に非はない。後でちゃんと謝らないとね」
 ぽん
 と、肩をたたいた。

 

 
 
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