AGEHA

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「ライスがあるけど…どうするんだろ?」



シュリはテニスボール大に握ってみる



「スシ…ミルキがどっかで食ったとか言ってたヤツかも」



「本当?!」



「うん 全然構わなかったから、それしか聞いてないけど」



「なんだぁ…」




離れた調理台に包丁を眺めるキルアの姿が見える



「またあのコと一緒だ キル、友達出来たのかな」



「……」



それには答えず、イルミはテニスボール大のライスを握っていた



「俺のほうが丸いな」










スシの実態が分からないまま、まん丸のライスボールをふたり合わせて10個作ったところで、意外な言葉が聞こえてきた



「魚ァ?!ここは森ん中だぜ?!」



「声がでかい!!」






≪聞いた?イルミ 魚だって!≫



≪うん 想像付かないけど≫



周りの受験生は小屋を飛び出し、ふたりも森へ向かった




「自分で捕れそう?」



「うん!魚くらい自分で捕りますよ!」




試験が始まって初めて、シュリはイルミから離れ別行動をとった







(とりあえず、川か池を探そう)



見当も付かないまま森を徘徊していると、近くで声がする



「ねえ―!こっちに川があるよ―!」



(やたっ!)



声の方向に走り森を抜けたシュリは、行動に早まったと気付く



飛び出した川辺にはキルアと一緒に居た少年と、他に2人の受験生がこちらを見ていた



(ど…どうしよ…)



焦って目を泳がせ、再び森へ戻ろうとしたシュリを少年は呼び止めた



「別にいいんだよ行かなくても 一緒に捕ればいいじゃん!」



後ろ向きで固まっていたシュリだったが、今はキルアの姿はない



(大丈夫だよね…)



逃げることも考えたが、かえって不自然と考え、帽子を下げて振り向いた



「オレはゴン!あっちはレオリオとクラピカ 君は?」



「ぼくはアゲハ…」



俯いたシュリにゴンは眩しいくらいの笑顔で笑いかける



「こっちに魚がいっぱいいるよ!早く捕ろう!」









ゴンの人懐っこさに次第に緊張はほぐれ、いつの間にか話が弾んでいた



「へえ〜お父さんはハンターなんだあ」



「うん!オレ、絶対ハンターになって親父に会うんだ!」



借りた釣竿で魚を待ち、ふたりは竿の揺れを見つめる



レオリオとクラピカは浅い所で川に入り、素手で魚を捕っている



「アゲハは?どうしてハンターになりたいの?」



不意に話を振られ、真っ直ぐな視線を向けてくるゴンに、自分を偽っている事を後ろめたく感じた



「ハンターになりたいっていうか…自信をつけたいんだ」



理由は全て話せないがその言葉に嘘はなく、シュリは遠くを見つめる



「ぼくは…落ちこぼれだから…」



「どうしてそんなこと言うの?」



ゴンが悲しそうな瞳をこちらに向けたのを感じたが、それを見る事は出来なかった



「この試験だって…自分の力だけじゃないし…」



「みんなそうだよ 協力して試験をクリアすることは、全然悪いことじゃないよ!」



キルアが彼と一緒だった理由が分かる気がした



子供らしくないどこか擦れたところのあるキルアにも、彼の純心さは眩しく映るのであろう



「ありがと…」



「わ!引いてる引いてる!」



慌てて竿を振り回すシュリにゴンは手を沿え、水飛沫を伴って魚が引き上げられた








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