AGEHA**
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ついて来いと言われ、五色の襖の一つを開き部屋を移動した
レイヴに続いてイルミが歩き、少し離れて白狐が追って来る
廊下を突き当たりまで進むと、広い空間に出た
天井部分は一面窓になっていて、地上の光を取り込んで真っ直ぐ地下へ注ぐ
中央に造られた巨大な生け簀には錦鯉が放たれ、水面に漂う白睡蓮は桃源を思わせた
光の作用か壁に水の揺らめきが映り、何だか本当に、俗界とは切り離された時間が流れている様な気がしてしまう
足を止めたイルミを余所に、レイヴは生け簀の横を通り抜け更に進む
一体何処に連れて行く気だろうと思いながら、イルミはレイヴの蝶結びの帯について行った
先程から二人に挟まれて歩いて居るのだが、連行されている様で少し気に食わない
前からも後ろからも伸びてくるオーラが、身体中に纏わりついて詮索してくる
今から実力を計られるのはあまり都合がよくないだろうと、イルミは気を鎮めて情報を消した
目的地を知らされない移動は時間と距離の感覚を狂わす
長い廊下の曲がり角を折れた頃、イルミはこの屋敷の構造が全く分からなくなっていた
仕事柄見取図を目にする事はよくあり、事前に情報を得ていない場合は、歩きながらその場で頭に画く癖がある
ところがこの屋敷の構造は、奥行も部屋数もまるで図れない
地下に入った後の移動でイルミの考えていた間取りが崩され、現在地の予測も付かなくなっていた
襖の前でレイヴは足を止めて振り返る、漸く目的の部屋に到着した様だ
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