AGEHA**

□53
1ページ/4ページ


ついて来いと言われ、五色の襖の一つを開き部屋を移動した 


レイヴに続いてイルミが歩き、少し離れて白狐が追って来る


廊下を突き当たりまで進むと、広い空間に出た


天井部分は一面窓になっていて、地上の光を取り込んで真っ直ぐ地下へ注ぐ


中央に造られた巨大な生け簀には錦鯉が放たれ、水面に漂う白睡蓮は桃源を思わせた


光の作用か壁に水の揺らめきが映り、何だか本当に、俗界とは切り離された時間が流れている様な気がしてしまう


足を止めたイルミを余所に、レイヴは生け簀の横を通り抜け更に進む


一体何処に連れて行く気だろうと思いながら、イルミはレイヴの蝶結びの帯について行った


先程から二人に挟まれて歩いて居るのだが、連行されている様で少し気に食わない


前からも後ろからも伸びてくるオーラが、身体中に纏わりついて詮索してくる


今から実力を計られるのはあまり都合がよくないだろうと、イルミは気を鎮めて情報を消した


目的地を知らされない移動は時間と距離の感覚を狂わす


長い廊下の曲がり角を折れた頃、イルミはこの屋敷の構造が全く分からなくなっていた


仕事柄見取図を目にする事はよくあり、事前に情報を得ていない場合は、歩きながらその場で頭に画く癖がある


ところがこの屋敷の構造は、奥行も部屋数もまるで図れない


地下に入った後の移動でイルミの考えていた間取りが崩され、現在地の予測も付かなくなっていた


襖の前でレイヴは足を止めて振り返る、漸く目的の部屋に到着した様だ




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ