御伽噺1(蔵馬メイン小説)

□あの日の光
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「あ、目覚めました?」
「・・・いつの間に・・・」
「よっぽど疲れてたみたい。俺が風呂から戻ったらもうグッスリだったよ。」

時計を見ると深夜2時。
ここに来たのは10時くらいだったはずだから・・・

「退屈させたな。」
「ううん。貴方の寝顔も見れたしね。」

そう言って笑う蔵馬に軽く口付けて、テーブルにあるペットボトルに手を伸ばす。
久しぶりに見たあの夢・・・
幼すぎたせいではっきりとその姿を覚えてはいないが、確かにあれは100年程前に起こった事。
けれど飛影には不思議と確信があった。
まだ何も言ってないけれど・・・

「どうしたの?」
「何がだ?」
「寝起きなのに機嫌いいみたいだから。」
「お前がいるからというのは理由にならんか?」
「嘘つき。」

俺が起こしても寝起きは不機嫌なくせに・・・と膨れる蔵馬を軽くつついて欠伸と背伸びを一度で済ませる。
ベッドに背を預けて本を持つその体を後ろからぎゅっと抱きしめると、蔵馬は改めて驚きの表情で振り返った。

「夢を見たんだ。」
「夢?」
「あぁ。俺がまだガキだった頃、実際に起こった事だ。」
「・・・・・。」
「・・・聞きたいか?」
「ずるい。そうなるような言い方しといて。」

口を尖らせてそう言う蔵馬の鼻をつまんで軽くじゃれ合う。

「あの日・・・俺は盗賊達に追われていた。奴らは俺の氷泪石を狙っていた。」
「・・・・・。」
「その頃俺はまだ弱かった。」
「でもそのへんの妖怪よりは強かったでしょ?」
「だが俺より強い奴らのほうが多かった。」

くるりと向きを変えて次をねだるように見つめてくる蔵馬の髪を撫でながら続ける。

「もうダメかと思った時・・・目の前に見た事も無いような光が現れた。」





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