御伽噺1(蔵馬メイン小説)

□パンドラの箱
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「部屋に戻る。」

雷鳴が聞こえる。
軍事国家癌陀羅の中心に聳え立つ国王の住まう中枢。
最上階のその部屋に静かにその声は響いた。

「いつから・・・」
「・・・・・。」
「いつからこの国の軍事参謀総長の仕事に国王の慰めが加わった。」
「大切な者が弱みになるということだ。」

蔵馬は体を引きずりながら唇を噛み締めた。
誰にも触れさせなかったのに・・・
しかし母親の存在という奥の手を出した黄泉に逆らう事は出来なかった。

「・・・躯軍の筆頭戦士・・・飛影だったか・・・」
「!?」
「脈拍が速まったぞ?」

考えないようにしていたその名前を今この状況で出され、蔵馬は息を飲んだ。
ずっと押し殺してきた想いが再び胸の中に溢れてくるのを感じる。

「知っているか?躯は女なのだぞ。」
「え・・・」
「躯がいたく気に入って飛影を自分の下へ呼んだらしいな。」
「・・・・・。」
「さぞいい関係になっているだろう。」

体の中が騒がしい。
考えたくない事程強く大きくなっていく。
さっきまでの行為による痛みより、たった今感じ始めた心の痛みの方が激しくなってくる。

「おやすみ、蔵馬。また明日の晩も頼むぞ。」

痛い。
痛い。
自分の気持ちを伝えなくてよかった。
こんなにも汚れてしまった今、彼に合わせる顔なんてない。
もし・・・もし躯と思い合える関係ならなおさら・・・

「俺は・・・貴方が・・・」





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